tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

旅館松前は宿泊客の8割が外国人、また来たくなる奈良の小さな旅館!

2015年09月11日 | 観光にまつわるエトセトラ
旅館松前(奈良市東寺林町28-1)が朝日新聞デジタル(9/10付)に掲載されたと女将(柳井尚美)さんのFacebookで知った。タイトルは「宿泊客の8割が外国人 また来たくなる奈良の小さな旅館」だ。まずは全文を紹介する(トップ以下3枚の写真は、朝日の記事から拝借)。

多くの観光客が降り立つ近鉄奈良駅から、昔ながらの町並みが残る奈良町方面に歩いていくと、猿沢池近くの静かな路地に「旅館松前」の看板を見つけた。部屋数は15、素泊まりをベースにした料金体系の宿には、大きな旅館のように充実した設備やサービスはない。しかしここは多くのリピーターに愛され、また宿泊客の8割を外国人が占める。来年の桜の時期はすでに予約で満室の日もあるという。

主人の柳井尚美さんは、ごくわずかなスタッフのみで旅館を切り盛りしている。夫・壮一さんの両親が経営していた頃は修学旅行生の宿泊がメインだったが、アメリカで料理人として活躍していた壮一さんが帰国し、夫婦で旅館に携わるようになった約20年前から外国人の受け入れを始めた。フランス大使館のスタッフが泊まったことをきっかけにフランス人のお客が増えたのをはじめ、口コミで訪れる個人客が次第に増加。リピーターを大切にしたいと大手旅行サイトへの登録をやめ、予約はすべて直接受けるようになった。

2009年に壮一さんが病で死去、2011年の東日本大震災では1年間で予約3千人分がキャンセルと大きな困難にも見舞われたが、震災の時には海外から日本円で見舞金を送ってくれた常連もいた。「うちのお客さんは本当にいい人たち。宿って、お客さんがつくるものだと思うんです」。柳井さんは「この仕事が本当に楽しい」と穏やかに笑う。


ドイツ人のリピーターからプレゼントされたワインのボトルを手にする柳井さん 

温かみのある書や仏像など、小さな宿は柳井さんの「好きな世界」に彩られている。書家としても活動する柳井さんは、色紙や短冊に好きな言葉を自由に書く「墨あそび」を宿泊客に体験してもらっている。見事な老松図が壁を飾る広間では、10年来の縁がある大蔵流狂言の「狂言らいぶ」を開き、伝統芸能に気軽に親しむ機会を設けている。

「みなさん日本に興味があるから、あえて旅館に泊まりに来ている。何か問題が起きても逃げずに対応し、こうしてほしいという要望があれば、地域とも連携してなるべく手立てを考えてあげたい」。居酒屋の紹介から病気になったときの病院探しまで、柳井さんはお客が必要としていることに寄り沿うことに努める。

この日はオーストラリアとニュージーランドから来ていた女の子2人組から、「温泉に行きたい」というリクエストが入った。近くに温泉がないため、柳井さんが銭湯を教えてあげると、しばらくして戻ってきた2人は「誰もいなくてわたしたちだけだったの。広いお風呂、気持ちよかった!」と上気した顔をほころばせた。


別途予約すると味わえる、夕食の会席料理「狂言秀句盛」。アメリカの有名ホテルでスーシェフ(副料理長)を務めた柳井さんの亡き夫・壮一さんのレシピがもとになっている

家族4人で日本各地を旅行中というオーストリア人の男性になぜ松前を選んだのか尋ねると、「そもそもホテルは好きじゃないんだ」と笑いながら、「大きな旅館は混乱して落ち着かないこともあるけど、ここは適度にコンパクトで快適。スタッフもフレンドリーだしね」と話してくれた。

宿の一角に、ぬいぐるみやワインなど、世界各国のリピーターが持ってきてくれたお土産が飾ってあった。たとえるなら、家のような居心地のよさと安心感。だからみんな、またここに帰ってきたくなる。(文 谷口絵美)(写真 谷口絵美/旅館松前)


女将さんには、7月13日(月)に開催された「第4回 観光力創造塾」(南都銀行主催)にご登場いただいた(私と女将とのトークセッション)。その時の模様が一般財団法人「南都経済研究所」の月報(2015年9月号)「トピックス」欄(PDF)に掲載された。旅館松前の人気の秘密がうまく引き出せたと自負している。抜粋して紹介すると、


以下の写真は、すべて7/13の撮影

第Ⅱ部 トークセッション(柳井尚美氏・鉄田憲男)
―奈良町の旅館松前は、世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」で、2013年に続き2015年も「エクセレンス認証」を取得されました。おめでとうございます。多くの宿泊客が旅館松前のサービスや女将の接客を高く評価しています。今日はその秘訣をお聞きしたい。

―日吉館(会津八一ら多くの文人や学者に愛された登大路町にあった旅館)によく泊まられたとか。
柳井 東京の大学生のときに京都が好きでよく来ていて、奈良に良い旅館があると聞いた。面白いお客さんがいて、知らない世界を身近に実体験として語ってくれた。お客さん同士の橋渡しは、女将の田村キヨノさんが上手にされていた。

―今は、旅館松前が日吉館の役割を果たされているのでは。奈良に惹かれたのはなぜか。
柳井 情報があふれる東京で思い詰めていたとき、奈良に来るとホッとした。自分の足音が聞こえるようで、自分を取り戻すことができた。


―旅館松前は宿泊客の8割が外国人とか。
柳井 フランス、イタリア、スイス、カナダ、スペイン、オーストラリア、アメリカの順。

―リピーターが多いのですか。
柳井 初めての方が多いが、友人の紹介とか、家族を連れてきたりする海外の方も増えている。

―書道体験の「墨あそび」とは。
柳井 好きな言葉を書いて色紙を1枚仕上げてもらう。約1時間で、墨を使うので1,000円いただいている。墨あそびが面白いと思った方には、奈良で(墨や筆を)買えるところを案内している。

―狂言の稽古も見学できるとか。
柳井 月に3回、木曜日に行っている。

―外国人から多い質問は。
柳井 3泊される方もいて、よく食事場所を聞かれる。何回かは、近隣のお店を紹介している。



―「トリップアドバイザー」の口コミで絶賛されているが、5つ星の評価をどう思いますか。
柳井 悪い評価が書かれていることもあり、それを見ると凹む。評価されているのは、ロケーションと、値段がそんなに高くないことか。もう1つの付加価値としては、私を含めてスタッフが「お客さまが困っていることが解消されて、喜んでいただくことを大切にしている」ということを評価してもらっているのかなと。

―口コミには「helpful」というコメントが多い。外国人は、どこで情報を得ているのですか。
柳井 一番多いのは『ロンリープラネット』(旅行ガイド本)。同じくフランスの『ルーター』という本も。他は『ミシュラン・グリーンガイド』などで見て、そこから当館のホームページを開き、メールを入れるという流れだ。



―これから外国人観光客を呼ぼうという意欲のある宿泊施設に、ひと言アドバイスを。
柳井 大切なことは、自分の国や自分自身をよく知ることであり、外国語がうまくなることでも、外国人の真似をすることでもない。宿という立場からいえば「安心していただく」ということに尽きる。国籍ではなく、人間としてお互いに楽しくなる方法を相手の身になって考え、実行することが問題の解決になると思う。




女将の特技である書道や狂言や英会話をうまく活かしながら、宿泊客の心をとらえ続けている「旅館松前」。奈良のインバウンドの牽引役として、ご活躍いただきたい。女将さん、これからも頑張ってくださいね!
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