tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

講演概要「これからの日本の観光!」 by 須田 寬氏(JR東海相談役)

2018年06月09日 | 観光にまつわるエトセトラ
2018年6月4日(月)、備後町クラブ(大阪市中央区備後町)で「これからの日本の観光!」(第24回観光のひろば)という講演会が開催された。主催はNPO法人スマート観光推進機構と関西ベンチャー学会。講師はJR東海相談役の須田寬氏だった。私はあいにく出席できなかったが、当日の講演概要がスマート観光推進機構のHPに掲載されたので、抜粋して紹介しておく。

観光推進への課題として「訪日外国人旅行者」は2,869万人と順調に増加し「観光立国」へ堅調な歩みを進めつつあるが、様々な課題が発現し、前途に困難が予見される。
①地域による偏りが見られる
②増加するリピーターの受入体制が不充分
③経済効果を受け止めるべき観光産業がその機能を充分に果たしていない、さらに、
④観光の安全対策の緊急性が指摘される
と指摘されました。



観光客は、大都市圏、特定観光地へ集中し、宿泊施設の需要も偏り、深刻な需給逼迫が見られる。このため観光の地方分散、利用度の低い宿泊施設の有効活用等が緊急の課題で「汎日本(オールジャパン)観光」の展開が必要である。

観光客が多く、京都市では市民がなかなかバスに乗れない、鎌倉では江ノ電に乗れないなど、市民生活にも影響が出ている。観光客を地方に分散する仕組みを緊急に作らないと「観光公害」という問題に発展しかねない。そのために地方空港、地方港湾の整備を含め、観光地を横に結ぶ交通インフラ整備が不可欠になる。観光地を利用者の立場にたった第3次交通を作らないといけない。

今、リピーターが増加しているが、皆が同じ観光スポットには行かないで、もっと各地を回れるような「多様な観光資源」を作り提供していかないとリピーターは来ない。「食」を取り入れた観光、「早朝観光」や「夜景」など時間差を加えた観光など、ワイドな観光に取り組まなければならない。

観光産業は伝統的な形態で98%が中小企業。人材育成も進まず、IT導入など経営の近代化も遅れている。観光客を呼ぶ工夫も足りない。観光産業の経営近代化・効率化が急務である。

観光の基礎は「安全、安心」である。南海トラフ地震が30年以内に80%の確率で起こると言われる。今、地震が起こった時の観光客への特別な対策はほとんど用意されていない。地震で多くの死者が出たり、避難先の不備があった場合、信用を失い、日本を訪れる観光客は減少する。そのような事態を招かないためにも、観光客の避難、誘導、保護対策の確立が緊急の課題になる。

昔は観光に関する情報がなかったから旅行会社へ行った。今はネットで観光情報は自由に手に入るようになった。さらに魅力を高める工夫をしないとリピーターは来なくなる。

質疑応答で「民泊」についての意見を求められ、須田様は「これまで民泊は認められていなかったから、いい加減なヤミ民泊が増えた。金を取って宿泊客を泊めるなら、旅館やホテルと同じ規制がかけられなければならない」。またオリンピックへの意見では、「オリンピックのみで観光客が増えるものではない。外国人もそれほど増えないし、日本人はテレビ観戦するので、観光の効果は期待できない。オリンピックにより日本の知名度が上がったことに効果がある。それを観光でどう受け止めるか、である」。

「観光」とは、自家用車で来て、ただ見物して通過するだけで人的交流がなく「金を使ってもらわない観光」は、地域に公害をまき散らすだけ。観光は「文化活動、経済活動」である。観光に行きたくなるのは人の本能であり、あそこに行くと楽しい、あそこの食を食べに行きたいと思う「魅力ある観光」を作らないといけない、と話を締めくくられました。


観光地の地方分散が必要、日帰り観光(通過型観光)は地域に公害をまき散らすだけ、多様で魅力ある観光を提供しなければならない、など、奈良にとって示唆に富むご指摘をいただいた。

外国人観光客も「リピーター」が来る時代になった。リピーターは「大仏さまと鹿」ではなく、あまり旅行者が訪れない「隠れ観光スポット」に行きたがるという。奈良は県中南部の魅力を大いにアピールし、「汎奈良(オールNARA)観光」を推進しましょう!



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする