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「日本遺産」を活用し、もっと地域の魅力発信を(観光経済新聞「観国之光」215)/観光地奈良の勝ち残り戦略(125)

2018年06月24日 | 観光にまつわるエトセトラ
週刊観光経済新聞の1面には毎回「観国之光」という社説が載り、いつも愛読している。6/16号に掲載されたのは「日本遺産 魅力発信にもっと力を」(第215回)、筆者は同紙論説委員の内井高弘氏だ。まずは全文を紹介する。
※トップ写真は、2018年度の日本遺産(山寺と紅花)に認定された山形県の山寺からの景観。同県のホームページから拝借した

地域の有形、無形の文化財をテーマでまとめて魅力を発信する「日本遺産」。先ごろ、新たに13道県の13件が認定され、これで計67件となった。認定された自治体からは「知名度がアップし、観光客誘致に弾みがつく」と期待する声も出る。

日本遺産がスタートして今年で4年目。文化庁は日本遺産としてのブランド力を保つため、やみくもな認定はせず、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに100件程度にする考えだ。となると認定される枠はあと30件あまり。自治体間の認定獲得競争も激しくなりそうだ。

とはいえ、日本遺産自体の知名度は決して高くはない。文化庁が首都圏、関西圏の18~69歳の男女千人を対象に実施した「日本遺産と旅行に関する意識調査」によると、日本遺産を「知っていて、実際に訪れたことがある」「知ってはいるが、訪れたことはない」という答えを合わせると29.4%となり、3割に満たないことが分かった。

文化庁や認定自治体などは、魅力を広く発信し、訪れてもらう努力をもっとすべきだ。認定を受けたストーリーには文化芸術振興費補助金の交付による支援も行われるだけに、有効に活用してほしい。

今年3月、約50件の日本遺産について、観光資源として有効に活用されているかを検証する有識者委員会の17年度評価結果が公表された。その結果、約7割に観光インフラが不足しているなどの課題があったとして、改善を促した。もちろん、優れた取り組みも紹介している。

日本遺産は、文化庁に設置する外部有識者で構成される「日本遺産審査委員会」の審査結果を踏まえて、文化庁が認定する。認定をきっかけに、市民が郷土の文化財の存在を知り、誇りを持ち、将来にわたって文化財を守っていこうとの機運が生まれたら何よりだ。

世界遺産に比べ、日本遺産はやや地味で、インパクトに欠けるとの指摘もあるが、鳥取県三朝町の「日本一危ない国宝鑑賞と世界屈指のラドン泉」などは行ってみたくなるタイトルだ。いかに知ってもらうか、繰り返しになるが、情報発信が欠かせない。

100件になったはいいが、そのあとはどうなるのだろうか? 「各自治体の努力次第」「勝手にやって」と突き放すことはしないだろうが、日本遺産を一過性のものにしないためにも、文化庁には20年以降の中長期的な視点に立った生かし方を示してほしいものだ。また、認定自治体も観光地化に走ってほしくはない。文化財の価値を毀損しては本末転倒だ。文化財の保存と活用のバランスをうまく取ってもらいたい。

アンケートで「日本遺産を知っている」と答えた人がわずか29.4%とは、残念だ。日本遺産に認定された場所ではその旨が告知され、充実したパンフレットやマップ、観光サイトなどが提供されている。神奈川県伊勢原市(大山詣で)も、京都府南部(日本茶800年)も、明日香村など(古代の女帝)も、そうだった。これらは「文化芸術振興費補助金」による支援を受けたのだろう。

「日本遺産登録の申請には、事務負担が大きい」として尻込みする市町村が多いが、認定を受けることにより地域に誇りが生まれ、それが観光客誘致の原動力となる。歴史・文化遺産に恵まれた奈良県下の市町村は、もっと積極的に取り組んでいただきたいものだ。
コメント (8)
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