tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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過去を悔いず。答は未来にある(by 田中利典師)

2019年02月08日 | 田中利典師曰く
金峯山寺長臈(ちょうろう)で種智院大学客員教授の田中利典師が、ご自身のブログとFacebookに発表された書き下ろしエッセイを紹介する。過去を悔いるのではく未来に答を見出そう、という前向きな言葉には勇気づけられる。ぜひ熟読玩味を!
※トップ写真は、師のFacebookから拝借

昨日(人生は旅)に続いて、某紙のために書き下ろした文章です。没になったので、未発表です。実は長年書いてきた「今日の一言」というつぶやきの中で気に入った言葉を元に、文章を起こしてみたという試しの作品。まだいくつか書きためています。よろしくければどうぞ。

「愚者は常に過去を怨み、賢者は常に未来を計る」
人生の答えは過去にはない。人生の答えは未来にこそある。私はそう思っている。しかし人間は往々にして、その答えを過去に求めがちである。「あのときこうしておけば」「あんな人に出会わなければ」「あの事故さえなければ」…などなど、過去に起こった出来事や後悔に、いつまでも思い煩うのが人間の性(さが)と言える。そこには、元には戻らない現実の答えを、過去に探そうとする愚者の姿を見る。

しかし、過去に答えはないのだ。過ぎ去った事象は、どんなに思いを馳せようと、どんなに恨みを込めようと、取り替えることはできないし、過去に戻ってやり直すことなど出来ないのである。逆に、答えは未来にはたくさんある。未来はいろんな可能性と多くの答えに満ち満ちている。過去の失敗から立ち上がり、あらたな自分を見いだす機会はいくらでも用意されているのである。

障害者スポーツで活躍する選手を見ていると、本当に勇気づけられる。足をなくした少女がいた。きっと大きな大きな不幸に心は砕けたことだろう。しかしその悲しみの底から、いまの自分が出来ることを見つけ出し、不幸な過去を振り払うかのように、けなげに戦うその姿。まさに過去を怨まず、自分の未来を計ろうとする、賢者そのものである。過去に答えを探そうとする人間の性を乗り越えて、未来に答えを作り出す賢者でありたいと、私も願うものである。
コメント (2)
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