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田中利典師の「ルネサンス!山の宗教(5)自然とかかわり地球を守る。修験道通じて文化を見直したい」(産経新聞)

2023年09月23日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、産経新聞夕刊「新関西笑談」の最終回(2010.10.29付)、「ルネサンス!山の宗教(5)」(師のブログ 2013.8.18 付に全編掲載されたものを分割)である。
※トップ写真は、大峯山・山上ヶ岳で師が撮られたご来光(9/15 林南院開創50周年記念登拝)

修験道は山の宗教。平地の宗教と違い、山の宗教は野性的な生命力を秘めている。地球を守るのは山の宗教で、それが「修験道ルネサンス」、と話が展開する。なお私がインタビューを受けた「新関西笑談」の最終回(2013.12.6付)は観光の話で、「日帰り客を宿泊客に変えたい」だった。では師の最終回を以下に紹介する。

ルネサンス!山の宗教(5)2010.10.29
自然とかかわり地球を守る 修験道通じて文化を見直したい。
金峯山寺執行長 田中利典さん 


--執行長が提唱する「修験道(しゅげんどう)ルネサンス」とはどういうことなのですか
田中 平成12年に役行者(えんのぎょうじゃ)の1300年御遠忌(おんき)を迎えました。その前から「役行者ルネサンス」を唱え、それを機縁に「修験道ルネサンス」ということになった。修験道は日本人の精神文化を担ってきたが、明治の近代化政策は修験道を廃止し、これによって打撃を受けた。それで修験道を通じて近代を見直すことにしたのです。

--近代の見直しですか
田中 近代は日本文化を壊してきた。「グローバリゼーション」などまさにそれで、その土地にあった花や木があり、風土に根ざすものこそが文化。修験も駆逐された文化で、それを見直すことで近代のありようを考え直したい。修験には自然とのかかわり方が秘められています。

--修験道は今後注目されそうですね
田中 最近は権現(仏が神になって現れた姿)信仰について考えています。今、神仏習合が言われ始めているが、明治以前のあり方ではない。明治以前は権現が中心で、蔵王権現こそまさに神仏習合の姿。それを知ることが日本人の多様性を考えるうえで大切です。

--日本人の多様性とは
田中 神仏習合は単なる仲良しクラブではありません。多様性は大乗仏教が入ったことで普遍的になった。蔵王権現は釈迦の姿が権化し現れたもので、普遍性がある。すなわち「一即多」「多即一」。1つに多くが含まれ、多くは1つに起因している。蔵王権現は過去を表す釈迦如来、現在の千手観音菩薩、未来の弥勒(みろく)菩薩と言うが、それは1つの方便で、蔵王権現はお釈迦さんと同体です。

--「一即多」は華厳(けごん)経の考え方ですね
田中 そう。今まで蔵王権現についてこのような説明がされたことはなく、今、権現を「一即多」で読み説こうと思います。

--修験道ルネサンスというよりも「権現ルネサンス」ですね。ところで、きらびやかな伽藍(がらん)が並ぶ平地の宗教に対し、山の宗教は野性的な生命力を秘めていると思うのですが
田中 平地の伽藍というのはつまり都会の伽藍で、自然との関係が希薄になっていく。特に今、都会の論理で進めることは破綻(はたん)が見えつつある。山の宗教は自然とのかかわりがあり、地球環境を守るうえで大きな可能性があります。

--平城京の大寺と金峯山との関係は
田中 東大寺と関係が深い。説話によると、大仏造立の金が金峯山に求められたが、蔵王権現は「金峯山の金は56億7千万年後に弥勒が現れるときに敷き詰めるものだ。近江の石山で祈りなさい」と告げられた。その通りにすると陸奥から金が出たという。

--東大寺に遠慮してもらったようなものですね
田中 東大寺二月堂修二会(しゅにえ)(お水取り)で読み上げられる神名帳(じんみょうちょう)で、一番に登場するのが「金峯大菩薩」、つまり蔵王権現。こうしたことからいかに平城京と吉野山がつながっていたかがうかがえます。

--来年以降の「ポスト平城遷都1300年」はいかにお考えですか
田中 金峯山寺としてはここ10年ほど取り組んできたことがバージョンアップし今、「権現ルネサンス」となった。奈良県が持っている価値は寺社。しかし、行政は政教分離を言う。それが遷都1300年で寺社と連携し、奈良市以外の吉野などにも目が向きつつある。これを継続していただきたいです。=おわり(聞き手 岩口利一)

たなか・りてん 金峯山修験本宗宗務総長、金峯山寺執行長。昭和30年、京都府綾部市生まれ。龍谷大学仏教学科、叡山学院専修科卒業後、金峯山寺に入った。平成13年に同寺執行長などに就任。「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録を導いた。著書に「修験道っておもしろい!」「はじめての修験道」などがある。
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