11/30(月)、「第2回 林業・木材関連産業座談会」が株式会社イムラ「平城山(ならやま)パルク」(奈良市三条大路)で開かれ、奈良新聞(12/17付)に掲載された。昨年の第1回に続く企画である。見出しとリード文は、
南都銀行 第2回林業・木材関連産業座談会
林業再生で活力創造
昨年創立80周年を迎え、90周年までの今後10年間の経営ビジョンを「活力創造銀行」として地元の活力創造をめざす南都銀行(本店奈良市)。昨年4月に「公務・地域活力創造部」が発足、また今年6月には新頭取に橋本隆史氏が就任し、新体制で一層力強く、経営理念の一つである「地域の発展に尽くす」歩みを進めている。とりわけ、銘木「吉野杉」また、吉野林業に代表される県の主要産業、林業・木材関連産業の振興への思いは強く、各方面で支援を続けている。今回は、吉野材をふんだんに使った株式会社イムラの平城山(ならやま)パルク展示場(奈良市三条大路)に、林業関係者、有識者に集まっていただき、橋本頭取をホスト役に「林業再生」への熱い思いを語ってもらった。(コーディネーターは、南都銀行公務・地域活力創造部の鉄田憲男氏)
全文は南都銀行のHP(PDF)でお読みいただくとして、私の印象に残った部分をピックアップして紹介する。
岩井洋氏(帝塚山大学学長)
「実学の帝塚山」として、地域の企業・団体との産学官金連携に力を入れています。十津川高校と連携協定を結んでおり、吉野杉の活用も模索しています。
(全国の事例として)高知県のNPO法人「土佐の森・救援隊」による、自伐型林業とバイオマスの利用を合わせた方法などは参考になります。
井村義嗣氏(株式会社イムラ社長)
1986年に木造住宅事業を開始し、特に「吉野杉」にこだわった住宅販売に力を入れてきました。「産地直送で木材の流通革命を起こそう」という川上さぷり(川上産吉野材販売促進協同組合)と連携して、吉野杉をふんだんに使用した住宅を供給。その数は15年間で700棟。
あえて申し上げれば、木材産業は「あぐらをかいていた」のです。木を使うことへのPRが足りない。
国交省が2年前にアンケートしたところ、約80%の人が「家を木造で建てたい」と答えました。それも「できるなら地元の木で建てたい」と。国産材は高いと思われていますが、実は、リーズナブルな価格でご提供できます。
「吉野かわかみ社中」が生産から加工、流通、販売に至る一貫体制の安定供給支援を開始し、その材をイムラが上質な住まいづくりに使う。こうした官民一体の取り組みが評価され、2015年度グッドデザイン賞を受賞しました。
室垣内清明氏(奈良県農林部 奈良の木ブランド課主幹)
昨年一年かけて県の木材産業の現状を見直し、6月の県議会で林業振興プランの承認を得ました。毎年100万立方メートルの森林成長量があるのに15万立方メートルしか使われていません。吉野材は基本的にはヘリコプター出材で、マグロで言えば「トロの部分」だけを使っている。並材の注文があっても対応できないのです。建物用材として、材をまるごと使い切る施策が必要で、新しいプランにはそれを盛り込んでいます。
現在核となる県産材のホームページがないので、ポータルサイトの立ち上げを検討しています。
森口尚氏(吉野かわかみ社中 事務局長)
高度成長期は「木を出したら売れる」状態でした。そのあと木材不況がきて、阪神・淡路大震災で木造家屋が多く倒れたということで木材離れが起きた。実際は、木材だから強度が弱いのではなく、基礎部分の不具合や強度を保つための「筋交(すじか)い」がないなど、戦後の木材住宅の建設ラッシュで、工法に問題のある建物が多かったのです。その一方、マンションなど、非木造住宅が増えてきた。
ストーリー性を伝え、木はどんな使い方ができるのかをもっと提案していく「林業維新」をしたい。幕末の坂本竜馬がつくった「亀山社中」にあやかって「吉野かわかみ社中」と名付けています。
鳥居由佳氏(川上村地域おこし協力隊)
昨年は、自分で買った杉の丸太に抱きついた写真をフェイスブックに投稿したり(2万件のシェア)、テレビのバラエティ番組に出たり、吉野林業のPR活動をさせてもらっています。
林業イコール「ネガティブ」にしか聞こえないことが現状で、それは「山側」の思いこみです。それが消費者に伝わってしまっている。「しんどい」と聞けば「ああしんどいのね」と言われるだけ。人は、前向きに頑張っている人を応援したいのです。
林業、木材産業全体の県警ができていなくて「自分の村のことだけ」では、林業振興は望めません。
もっとたくさん、ポジティブな情報を発信できればと思っています。
橋本隆史氏(南都銀行頭取)
林業家・山守ほか数ある県下の木材協同組合と同じ歩調で「奈良ブランド確立」という目標に向け方向性を一つにして、「小異を捨てて大同につく」、オール奈良県的な動きができると、銀行としても協力しやすい。明治時代に土倉庄三郎氏(「吉野林業の父」と言われる川上村出身の偉人)は、林業家を説き伏せて、五社峠(川上村・吉野町)に道をつけたり、東熊野街道を整備などをされた。大きな目標に向かい、協力して動き出すことができれば良い。
きょうのお話の中でも、林業の今後に向けたヒントがたくさん出ていると思います。今後も皆様方と意見交換しながら、地元金融機関として林業振興へのお手伝いを一生懸命やっていきたいと思います。
それぞれの立場からホンネが飛び出し、有意義な座談会だった。ブログやFacebookなどで拡散されているので、良いPRになっている。ゲストの中では、鳥居由佳さんの発言がユニークだった。内に閉じこもって「しんどい」と言っていても、現状は何も変わらない。業界や地域の内外での「連携」ができれば、良い知恵も出てくるし、何より姿勢が「ポジティブ」になってくる。そのためには情報の発信と共有が必要だ。
この座談会を企画・運営し、1本の記事としてまとめるのは大変だったが、何とか「ブレークスルー」する方向性が見えてきた。来年(2016年)は、土倉庄三郎氏の百回忌。あらゆる機会をとらえて、吉野林業に光を当てたいものである。
ご参加・ご協力いただいた皆さん、有難うございました!
南都銀行 第2回林業・木材関連産業座談会
林業再生で活力創造
昨年創立80周年を迎え、90周年までの今後10年間の経営ビジョンを「活力創造銀行」として地元の活力創造をめざす南都銀行(本店奈良市)。昨年4月に「公務・地域活力創造部」が発足、また今年6月には新頭取に橋本隆史氏が就任し、新体制で一層力強く、経営理念の一つである「地域の発展に尽くす」歩みを進めている。とりわけ、銘木「吉野杉」また、吉野林業に代表される県の主要産業、林業・木材関連産業の振興への思いは強く、各方面で支援を続けている。今回は、吉野材をふんだんに使った株式会社イムラの平城山(ならやま)パルク展示場(奈良市三条大路)に、林業関係者、有識者に集まっていただき、橋本頭取をホスト役に「林業再生」への熱い思いを語ってもらった。(コーディネーターは、南都銀行公務・地域活力創造部の鉄田憲男氏)
全文は南都銀行のHP(PDF)でお読みいただくとして、私の印象に残った部分をピックアップして紹介する。
岩井洋氏(帝塚山大学学長)
「実学の帝塚山」として、地域の企業・団体との産学官金連携に力を入れています。十津川高校と連携協定を結んでおり、吉野杉の活用も模索しています。
(全国の事例として)高知県のNPO法人「土佐の森・救援隊」による、自伐型林業とバイオマスの利用を合わせた方法などは参考になります。
井村義嗣氏(株式会社イムラ社長)
1986年に木造住宅事業を開始し、特に「吉野杉」にこだわった住宅販売に力を入れてきました。「産地直送で木材の流通革命を起こそう」という川上さぷり(川上産吉野材販売促進協同組合)と連携して、吉野杉をふんだんに使用した住宅を供給。その数は15年間で700棟。
あえて申し上げれば、木材産業は「あぐらをかいていた」のです。木を使うことへのPRが足りない。
国交省が2年前にアンケートしたところ、約80%の人が「家を木造で建てたい」と答えました。それも「できるなら地元の木で建てたい」と。国産材は高いと思われていますが、実は、リーズナブルな価格でご提供できます。
「吉野かわかみ社中」が生産から加工、流通、販売に至る一貫体制の安定供給支援を開始し、その材をイムラが上質な住まいづくりに使う。こうした官民一体の取り組みが評価され、2015年度グッドデザイン賞を受賞しました。
室垣内清明氏(奈良県農林部 奈良の木ブランド課主幹)
昨年一年かけて県の木材産業の現状を見直し、6月の県議会で林業振興プランの承認を得ました。毎年100万立方メートルの森林成長量があるのに15万立方メートルしか使われていません。吉野材は基本的にはヘリコプター出材で、マグロで言えば「トロの部分」だけを使っている。並材の注文があっても対応できないのです。建物用材として、材をまるごと使い切る施策が必要で、新しいプランにはそれを盛り込んでいます。
現在核となる県産材のホームページがないので、ポータルサイトの立ち上げを検討しています。
森口尚氏(吉野かわかみ社中 事務局長)
高度成長期は「木を出したら売れる」状態でした。そのあと木材不況がきて、阪神・淡路大震災で木造家屋が多く倒れたということで木材離れが起きた。実際は、木材だから強度が弱いのではなく、基礎部分の不具合や強度を保つための「筋交(すじか)い」がないなど、戦後の木材住宅の建設ラッシュで、工法に問題のある建物が多かったのです。その一方、マンションなど、非木造住宅が増えてきた。
ストーリー性を伝え、木はどんな使い方ができるのかをもっと提案していく「林業維新」をしたい。幕末の坂本竜馬がつくった「亀山社中」にあやかって「吉野かわかみ社中」と名付けています。
鳥居由佳氏(川上村地域おこし協力隊)
昨年は、自分で買った杉の丸太に抱きついた写真をフェイスブックに投稿したり(2万件のシェア)、テレビのバラエティ番組に出たり、吉野林業のPR活動をさせてもらっています。
林業イコール「ネガティブ」にしか聞こえないことが現状で、それは「山側」の思いこみです。それが消費者に伝わってしまっている。「しんどい」と聞けば「ああしんどいのね」と言われるだけ。人は、前向きに頑張っている人を応援したいのです。
林業、木材産業全体の県警ができていなくて「自分の村のことだけ」では、林業振興は望めません。
もっとたくさん、ポジティブな情報を発信できればと思っています。
橋本隆史氏(南都銀行頭取)
林業家・山守ほか数ある県下の木材協同組合と同じ歩調で「奈良ブランド確立」という目標に向け方向性を一つにして、「小異を捨てて大同につく」、オール奈良県的な動きができると、銀行としても協力しやすい。明治時代に土倉庄三郎氏(「吉野林業の父」と言われる川上村出身の偉人)は、林業家を説き伏せて、五社峠(川上村・吉野町)に道をつけたり、東熊野街道を整備などをされた。大きな目標に向かい、協力して動き出すことができれば良い。
きょうのお話の中でも、林業の今後に向けたヒントがたくさん出ていると思います。今後も皆様方と意見交換しながら、地元金融機関として林業振興へのお手伝いを一生懸命やっていきたいと思います。
それぞれの立場からホンネが飛び出し、有意義な座談会だった。ブログやFacebookなどで拡散されているので、良いPRになっている。ゲストの中では、鳥居由佳さんの発言がユニークだった。内に閉じこもって「しんどい」と言っていても、現状は何も変わらない。業界や地域の内外での「連携」ができれば、良い知恵も出てくるし、何より姿勢が「ポジティブ」になってくる。そのためには情報の発信と共有が必要だ。
この座談会を企画・運営し、1本の記事としてまとめるのは大変だったが、何とか「ブレークスルー」する方向性が見えてきた。来年(2016年)は、土倉庄三郎氏の百回忌。あらゆる機会をとらえて、吉野林業に光を当てたいものである。
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