毎週日曜日、奈良新聞に連載されている「白川静文字学入門 漢字物語」(中高生向けの「ならティーンズ」頁)を愛読している。この連載は7/20(日)で、はや16回目を数えた。
最近、フジサンケイビジネスアイでも連載が始まったので、共同通信の配信記事だろうが、白川静氏の研究に基づき週替わりで漢字のルーツが詳しく説明されていて、興味深い。7/20は「進」で、これは「隹」(とり=鳥)に、道を行くことを意味する「しんにょう」(orしんにゅう)を付けたもので、軍隊を進軍させるのに、鳥占いをして神の意思を聞いてから前進させたことを表すのだそうだ。
中高生に正しい字源を紹介するのは、とても意義のあることだ。というのも最近、世間では珍妙な漢字解釈が堂々とまかり通っているからだ。私など、それを確かめるために、白川静著『常用字解』(平凡社 2800円)という辞書まで買ったほどだ。
たとえば子供の頃に「人という字は、人と人(つまり/と\)が支えあっている形だ」と教わった方は多いのではないだろうか。「だから、お互い助け合いましょうね」という教訓だ。しかし同書によると、人という漢字は《象形。立っている人を横から見た形》とある。つまり1人の人間だったのだ。
最近は「『食』という字は、人に良いと書く」などという珍説がある。食育の話のマクラなどに使われているようだが、同書によれば「食」は、器の上にフタ(∧)を載せた象形文字だ。話としては面白くても誤った解釈を広めることは、食育上は良くても、教育上よろしくない。「『戀(恋)』という字は、いと(糸)しい、いとしいと言う心」という明らかなジョークなら、罪はないのだが。
前置きが長くなったが、この「白川静文字学入門 漢字物語」にならって、奈良にちなんだ漢字のルーツを『常用字解』を手がかりに紹介することにしたい。ちなみにタイトルの「奈良を感じる漢字」は「感じ」と「漢字」の掛け言葉であ、悪しからず。
さて、初回は「平」だ。『奈良の地名由来辞典』によると、《奈良の地名は、草木を踏み平(なら)した所》という意味だそうだ。確かに平城、天平、平群など、「平」の字はよく目にする。
『常用字解』によれば、平は《于(う)と八を組み合わせた形。于は手斧の形。八は木片の形。手斧で木を平らかに削って木片が左右に飛び散る形が平》。平の古音はベンで《おそらく手斧でうつときの音を写したものであろう》とある。
今も小型の斧で草木を刈ったりするが、それが平(なら)す→奈良とつながるのだから面白い。家の庭に雑草が茂っているいう県民の皆さん、この字源を思い出して、いっちょ手斧か鎌で平(なら)されてはいかがだろう。
※冒頭の書は、篆書(てんしょ)体で「蝶戀華(蝶は花を恋う)」。書道をたしなむ私の家内が書いたものだ。ついさっき、意味を教えてもらったばかりだが…。
最近、フジサンケイビジネスアイでも連載が始まったので、共同通信の配信記事だろうが、白川静氏の研究に基づき週替わりで漢字のルーツが詳しく説明されていて、興味深い。7/20は「進」で、これは「隹」(とり=鳥)に、道を行くことを意味する「しんにょう」(orしんにゅう)を付けたもので、軍隊を進軍させるのに、鳥占いをして神の意思を聞いてから前進させたことを表すのだそうだ。
中高生に正しい字源を紹介するのは、とても意義のあることだ。というのも最近、世間では珍妙な漢字解釈が堂々とまかり通っているからだ。私など、それを確かめるために、白川静著『常用字解』(平凡社 2800円)という辞書まで買ったほどだ。
たとえば子供の頃に「人という字は、人と人(つまり/と\)が支えあっている形だ」と教わった方は多いのではないだろうか。「だから、お互い助け合いましょうね」という教訓だ。しかし同書によると、人という漢字は《象形。立っている人を横から見た形》とある。つまり1人の人間だったのだ。
最近は「『食』という字は、人に良いと書く」などという珍説がある。食育の話のマクラなどに使われているようだが、同書によれば「食」は、器の上にフタ(∧)を載せた象形文字だ。話としては面白くても誤った解釈を広めることは、食育上は良くても、教育上よろしくない。「『戀(恋)』という字は、いと(糸)しい、いとしいと言う心」という明らかなジョークなら、罪はないのだが。
前置きが長くなったが、この「白川静文字学入門 漢字物語」にならって、奈良にちなんだ漢字のルーツを『常用字解』を手がかりに紹介することにしたい。ちなみにタイトルの「奈良を感じる漢字」は「感じ」と「漢字」の掛け言葉であ、悪しからず。
さて、初回は「平」だ。『奈良の地名由来辞典』によると、《奈良の地名は、草木を踏み平(なら)した所》という意味だそうだ。確かに平城、天平、平群など、「平」の字はよく目にする。
『常用字解』によれば、平は《于(う)と八を組み合わせた形。于は手斧の形。八は木片の形。手斧で木を平らかに削って木片が左右に飛び散る形が平》。平の古音はベンで《おそらく手斧でうつときの音を写したものであろう》とある。
今も小型の斧で草木を刈ったりするが、それが平(なら)す→奈良とつながるのだから面白い。家の庭に雑草が茂っているいう県民の皆さん、この字源を思い出して、いっちょ手斧か鎌で平(なら)されてはいかがだろう。
※冒頭の書は、篆書(てんしょ)体で「蝶戀華(蝶は花を恋う)」。書道をたしなむ私の家内が書いたものだ。ついさっき、意味を教えてもらったばかりだが…。
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