(財)南都経済センターが発行する『センター月報』09年11月号の「奈良のうまいもの」探訪記コーナーで、「結崎(ゆうざき)ネブカ」が紹介されている。《奈良県が特産品の1つとして「大和野菜」に認定した、とても柔らかくて美味しい葉ネギである。特に食の安全・安心に関心が集まる中、身近な地産の食材として注目を集めている》。この結崎ネブカの試食会が、9/24(木)ホテル日航奈良で開かれた。この月報記事などを引用しつつ、当日の様子を紹介することにしたい。
川西町商工会のホームページによると、《「室町時代のある日のこと、一天にわかにかき曇り、空中から異様な怪音とともに寺川のほとりに落下物があった。この落下物は、一個の翁の能面と一束のネギで、村人は能面をその場にねんごに葬り、ネギはその地に植えたところ見事に生育し、戦前まで「結崎ネブカ」として名物になった……」という言い伝えがあります。(この翁は面はいまでは「面塚」として寺川のほとりに石標として残され、観世発祥の地として知られています)》。なお「ネブカ」とは関西弁でネギのことである。
http://www.kawanisityou-syoukoukai.jp/nebuka/index.html
《かつて大和野菜の雄としてのこ地で栄えた由緒ある「結崎ネブカ」は、柔らかくて甘みがあり、煮炊きものには最適でした。でも柔らかく、シャッキとしないその形は見た目の悪さと市場流通に適さない理由などによって、次第に忘れ去られていったのです。昨今の大量生産、大量消費といった生活様式が見直されるなか、スローフードブームの到来など、懐かしいふるさとの味が再評価されています。この時期に再び「結崎ネブカ」を町ぐるみで復活し、新しい川西町の特産品づくりとして活用するプロジェクトが、スタートしています。町全体で育て、食しそして広めて川西町のシンボルとして育てていく、「結崎ネブカ復活物語り」が始まっています》(同)。
結崎ネブカ復活のプロセスについては、センター月報に詳しい。《川西町商工会は町おこし事業(平成14年から3年間)として、「幻の結崎ネブカ復活」に取り組みだした。自家用として栽培を続けてきた農家の宇野正増氏から種を譲り受け、平成17年から3軒の農家で15アールに作付けし、初めて出荷をした。そして平成18年春にはJAならけん川西支店の組合員7名で「結崎ネブカ生産部会」を立ち上げ、栽培面積を徐々に増やし、地域をあげた取り組みとなってきた。今日では部会員が12名、栽培面積が約80アール、目標生産量が約18トンまで増えている。結崎ネブカは奈良県中央卸売市場(大和郡山市)にある奈良中央青果株式会社に一括出荷し、県内大手量販店、飲食店、旅館・ホテル等に販売されている》。
結崎ネブカは大変な労力をかけて出荷されている。《結崎ネブカは、育て、出荷する農家にとって負担が掛かる。栽培期間は約9ヵ月であり、その間、柔らかくても丈夫に育てるために、土づくりから肥料や水やり、病害虫対策まで、栽培方法には最新の注意が必要である。特に厳冬期は風が強く、葉が折れやすいため収穫作業に手間ひまが掛かる。折れて黄化した葉の摘み取りは、機械ではできず、人の手で行っている。また、ビニール袋の詰め作業も、結崎ネブカが柔らかく折れやすいため、他の野菜に比べて丁寧に扱うことが要求され出荷作業に時間を要している》(同)。
ぬた和え
9/24の試食会は、吉岡清訓さん(中和地区商工会広域協議会・経営指導員)にお誘いいただいた。試食会の告知記事(奈良新聞9/8付)によると《県が認定する大和の伝統野菜「結崎ネブカ」を県内の量販店や飲食店などに知ってもらおうと、結崎ネブカブランド化実行委員会(会長・上田直朗川西町長)とJAならけん結崎ネブカ生産部会(宇野正増部会長)は24日、奈良市三条本町8丁目のホテル日航奈良で「試食会」を開く》。
http://www.nara-np.co.jp/20090908102641.html
《平成14年度にから同町で地域特産事業品づくりが行われる中で、同ネブカが復活。現在は同生産部会の生産されるようになり部会員と生産量が増加。昨年度は生産者12人が約80アールで栽培し、約2トンを生産。本年度は8月24日から県内のスーパーに出荷しており、来年2月まで作業が続く。同ネブカはまた、20年度には農水省の「農林水産物・食品地域ブランド化支援事業」に採択され、全国23プランドの1つとして支援を受けている》(同)。
結崎ネブカとブルーチーズのタルト
すでに05年(平成17年)1月、私は吉岡さん(当時は川西町商工会に勤務されていた)のご好意で結崎ネブカを頂戴し、試食させていただいた。その時の感想はインターネット新聞に書かせていただいたが、おおよそ次のようなものであった。
結崎ネブカと小エビのチリソース
《湯豆腐に入れてみた。見た目の通り歯ざわりが柔らかく、味はあっさり上品。刺激臭が少なく、まったりした味わいだ。確かに、ほんのり甘みがある。青ネギ同様、煮物や鍋物にはもちろんだが、ネギ味噌(刻みネギにちりめんじゃこを入れ、味噌とみりんで和えた酒肴)にピッタリだった。マイルドな味なので、洋食材料としても使える。包装や輸送方法をひと工夫すれば、折れやすいという弱点は克服できるだろう》。
※幻のネギをさがせ!(インターネット新聞『JanJan』)
http://www.news.janjan.jp/living/0502/0502063346/1.php
スズキのポワレと結崎ネブカのピュレ 赤ワインソース
試食会では《結崎ネブカブランド化実行委員長の上田直朗川西町長は「お集まりの皆さんに、さらにネブカの良さを知ってもらい、広めていってもらえたら」と期待を込めてあいさつ。県農林部の浅井眞人部長も「県として、消費者へ届ける仕組みづくりに取り組んでいきたい」とエールを送った》(9/25付 奈良日日新聞)。
フードコーディネーターの松田弘子さんは、結崎ネブカのさまざまな効能や美味しい食べ方について、分かりやすいお話をして下さった。結崎ネブカは他の青ネギに比べて栄養が豊富で、鉄分は1.5倍、タンパク質、ビタミンB1・B2とCはそれぞれ1.4倍、カルシウムは1.3倍も含まれているそうだ。松田さんは、早くも試食会当日の夜、ご自分のブログに会の様子をアップしておられた。
http://ameblo.jp/greencharms/entry-10349758597.html
当日のお料理を作られたホテル日航の料理長さんも、ひと言。
《結崎ネブカは「緑葉部が柔らかい」「とろっとした濃厚さ」「甘みが引き立つ」「深みのある緑色」など独自の特徴を持ち、煮炊き、焼き料理に独特の甘みが加味される》(センター月報)。
大和肉鶏と結崎ネブカの鍋(トップ写真とも)
《結崎ネブカを主な材料にした10種類のメニューが紹介され、県内の飲食店オーナーや料理担当者、小売店、報道関係者が試食し、どのメニューも味も見た目もよく、来場者に好評を博した》(同)。
牛肉の結崎ネブカ味噌焼き
試食会翌日の新聞には、参加された方のコメントが出ていた《大和郡山市北郡山町のル・ベンケイのオーナーシェフ、尾川欣司さんは「やさしい味のネギで、ソースやスープに最適。地元の食材として活用したい」と語った。同委員会(結崎ネブカブランド化実行委員会)コーディネーターの梅屋則夫さんは「生産量と流通の拡大を両輪で進めていく」と展望を述べた》(奈良新聞)、《JAならけん結崎ネブカ生産部会の宇野正増会長は「生産が非常に難しい結崎ネブカだが、『ネギのブランドは結崎ネブカ』と言ってもらえるよう、努力したい」》(奈良日日新聞)。
コーディネーターの梅屋則夫さんとは、個人的にお話もさせていただいた。私は、まず需要を喚起する(出口を作る)ことが先決だと感じた。需要さえあれば、生産(入口)は自然についてくることだろう。その意味で、今回の試食会の狙いは正しいと思う。
結崎ネブカが全国23ブランドの1つに認定され、支援を受けているとは知らなかった。美味しさと栄養価だけでなく、食の安全・安心が問われる時代にあって、結崎ネブカは消費者に受け入れられる要素を十分備えている。しかも「物語」を持っているのは強い。ぜひ、結崎ネブカの、ひいては奈良の野菜の美味しさを全国の消費者にPRしていただきたいものである。
※大和野菜(奈良県のホームページ)
http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_menuid-2767.htm
吉岡さん、試食会にお誘いいただき、有り難うございました。
川西町商工会のホームページによると、《「室町時代のある日のこと、一天にわかにかき曇り、空中から異様な怪音とともに寺川のほとりに落下物があった。この落下物は、一個の翁の能面と一束のネギで、村人は能面をその場にねんごに葬り、ネギはその地に植えたところ見事に生育し、戦前まで「結崎ネブカ」として名物になった……」という言い伝えがあります。(この翁は面はいまでは「面塚」として寺川のほとりに石標として残され、観世発祥の地として知られています)》。なお「ネブカ」とは関西弁でネギのことである。
http://www.kawanisityou-syoukoukai.jp/nebuka/index.html
《かつて大和野菜の雄としてのこ地で栄えた由緒ある「結崎ネブカ」は、柔らかくて甘みがあり、煮炊きものには最適でした。でも柔らかく、シャッキとしないその形は見た目の悪さと市場流通に適さない理由などによって、次第に忘れ去られていったのです。昨今の大量生産、大量消費といった生活様式が見直されるなか、スローフードブームの到来など、懐かしいふるさとの味が再評価されています。この時期に再び「結崎ネブカ」を町ぐるみで復活し、新しい川西町の特産品づくりとして活用するプロジェクトが、スタートしています。町全体で育て、食しそして広めて川西町のシンボルとして育てていく、「結崎ネブカ復活物語り」が始まっています》(同)。
結崎ネブカ復活のプロセスについては、センター月報に詳しい。《川西町商工会は町おこし事業(平成14年から3年間)として、「幻の結崎ネブカ復活」に取り組みだした。自家用として栽培を続けてきた農家の宇野正増氏から種を譲り受け、平成17年から3軒の農家で15アールに作付けし、初めて出荷をした。そして平成18年春にはJAならけん川西支店の組合員7名で「結崎ネブカ生産部会」を立ち上げ、栽培面積を徐々に増やし、地域をあげた取り組みとなってきた。今日では部会員が12名、栽培面積が約80アール、目標生産量が約18トンまで増えている。結崎ネブカは奈良県中央卸売市場(大和郡山市)にある奈良中央青果株式会社に一括出荷し、県内大手量販店、飲食店、旅館・ホテル等に販売されている》。
結崎ネブカは大変な労力をかけて出荷されている。《結崎ネブカは、育て、出荷する農家にとって負担が掛かる。栽培期間は約9ヵ月であり、その間、柔らかくても丈夫に育てるために、土づくりから肥料や水やり、病害虫対策まで、栽培方法には最新の注意が必要である。特に厳冬期は風が強く、葉が折れやすいため収穫作業に手間ひまが掛かる。折れて黄化した葉の摘み取りは、機械ではできず、人の手で行っている。また、ビニール袋の詰め作業も、結崎ネブカが柔らかく折れやすいため、他の野菜に比べて丁寧に扱うことが要求され出荷作業に時間を要している》(同)。
ぬた和え
9/24の試食会は、吉岡清訓さん(中和地区商工会広域協議会・経営指導員)にお誘いいただいた。試食会の告知記事(奈良新聞9/8付)によると《県が認定する大和の伝統野菜「結崎ネブカ」を県内の量販店や飲食店などに知ってもらおうと、結崎ネブカブランド化実行委員会(会長・上田直朗川西町長)とJAならけん結崎ネブカ生産部会(宇野正増部会長)は24日、奈良市三条本町8丁目のホテル日航奈良で「試食会」を開く》。
http://www.nara-np.co.jp/20090908102641.html
《平成14年度にから同町で地域特産事業品づくりが行われる中で、同ネブカが復活。現在は同生産部会の生産されるようになり部会員と生産量が増加。昨年度は生産者12人が約80アールで栽培し、約2トンを生産。本年度は8月24日から県内のスーパーに出荷しており、来年2月まで作業が続く。同ネブカはまた、20年度には農水省の「農林水産物・食品地域ブランド化支援事業」に採択され、全国23プランドの1つとして支援を受けている》(同)。
結崎ネブカとブルーチーズのタルト
すでに05年(平成17年)1月、私は吉岡さん(当時は川西町商工会に勤務されていた)のご好意で結崎ネブカを頂戴し、試食させていただいた。その時の感想はインターネット新聞に書かせていただいたが、おおよそ次のようなものであった。
結崎ネブカと小エビのチリソース
《湯豆腐に入れてみた。見た目の通り歯ざわりが柔らかく、味はあっさり上品。刺激臭が少なく、まったりした味わいだ。確かに、ほんのり甘みがある。青ネギ同様、煮物や鍋物にはもちろんだが、ネギ味噌(刻みネギにちりめんじゃこを入れ、味噌とみりんで和えた酒肴)にピッタリだった。マイルドな味なので、洋食材料としても使える。包装や輸送方法をひと工夫すれば、折れやすいという弱点は克服できるだろう》。
※幻のネギをさがせ!(インターネット新聞『JanJan』)
http://www.news.janjan.jp/living/0502/0502063346/1.php
スズキのポワレと結崎ネブカのピュレ 赤ワインソース
試食会では《結崎ネブカブランド化実行委員長の上田直朗川西町長は「お集まりの皆さんに、さらにネブカの良さを知ってもらい、広めていってもらえたら」と期待を込めてあいさつ。県農林部の浅井眞人部長も「県として、消費者へ届ける仕組みづくりに取り組んでいきたい」とエールを送った》(9/25付 奈良日日新聞)。
フードコーディネーターの松田弘子さんは、結崎ネブカのさまざまな効能や美味しい食べ方について、分かりやすいお話をして下さった。結崎ネブカは他の青ネギに比べて栄養が豊富で、鉄分は1.5倍、タンパク質、ビタミンB1・B2とCはそれぞれ1.4倍、カルシウムは1.3倍も含まれているそうだ。松田さんは、早くも試食会当日の夜、ご自分のブログに会の様子をアップしておられた。
http://ameblo.jp/greencharms/entry-10349758597.html
当日のお料理を作られたホテル日航の料理長さんも、ひと言。
《結崎ネブカは「緑葉部が柔らかい」「とろっとした濃厚さ」「甘みが引き立つ」「深みのある緑色」など独自の特徴を持ち、煮炊き、焼き料理に独特の甘みが加味される》(センター月報)。
大和肉鶏と結崎ネブカの鍋(トップ写真とも)
《結崎ネブカを主な材料にした10種類のメニューが紹介され、県内の飲食店オーナーや料理担当者、小売店、報道関係者が試食し、どのメニューも味も見た目もよく、来場者に好評を博した》(同)。
牛肉の結崎ネブカ味噌焼き
試食会翌日の新聞には、参加された方のコメントが出ていた《大和郡山市北郡山町のル・ベンケイのオーナーシェフ、尾川欣司さんは「やさしい味のネギで、ソースやスープに最適。地元の食材として活用したい」と語った。同委員会(結崎ネブカブランド化実行委員会)コーディネーターの梅屋則夫さんは「生産量と流通の拡大を両輪で進めていく」と展望を述べた》(奈良新聞)、《JAならけん結崎ネブカ生産部会の宇野正増会長は「生産が非常に難しい結崎ネブカだが、『ネギのブランドは結崎ネブカ』と言ってもらえるよう、努力したい」》(奈良日日新聞)。
コーディネーターの梅屋則夫さんとは、個人的にお話もさせていただいた。私は、まず需要を喚起する(出口を作る)ことが先決だと感じた。需要さえあれば、生産(入口)は自然についてくることだろう。その意味で、今回の試食会の狙いは正しいと思う。
結崎ネブカが全国23ブランドの1つに認定され、支援を受けているとは知らなかった。美味しさと栄養価だけでなく、食の安全・安心が問われる時代にあって、結崎ネブカは消費者に受け入れられる要素を十分備えている。しかも「物語」を持っているのは強い。ぜひ、結崎ネブカの、ひいては奈良の野菜の美味しさを全国の消費者にPRしていただきたいものである。
※大和野菜(奈良県のホームページ)
http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_menuid-2767.htm
吉岡さん、試食会にお誘いいただき、有り難うございました。