エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

感動は 人として生きる豊かさ   

2006-05-06 | 教育を考える
 教職にあったとき、さわやかな新学期には達治の詩「甃のうへ」を板書しノートさせるのが常だった。教室から校庭を眺め、花びらが舞い散る情景に我が青春を語ってきた。そして生徒たちに何を感じるかを問い、甲斐ある高校生活を願うのが常であった。
 最先端のロボットが涙を流す時代は来ないと信ずるが、人が美しいものに触れ心を動かされない不思議を思う。世の中が時間的、精神的なゆとりを与えないからであろうか、周囲に関心を抱き感動する心が足りないと思う。
 雨上がりの蒼い山並が田植えの水面に映る美しさや風に揺れる小さな自然に、さらには文字の連なりからなる一編の詩からも心動かされる。生きゆく時間の中でのあらゆる感動は人として生きる豊かさに違いない。
 躾だけでなく情操を育てたい。それらに気づかない高学歴志向の中身を憂う。
 情緒、情操は小さい頃の家庭で育つものと思う。それらを反省する「心の教育」が大切である。

甃のうへ

あわれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなごしめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音空にながれ
をりふしに瞳をあげて
翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍みどりにうるほひ
廂々に
風鐸のすがたしづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃のうへ