エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

庭で家族を優しく見守る桐の木 

2006-05-15 | エッセイ
      《桐の芽吹き、開花は遅い》

 庭に樹齢五十年?ほどの桐の大木がある。今年も田植を待って、紫の筒状の花が開き始めた。葉芽吹きも一緒、じきに庭一杯にほのかに甘い香りが漂うだろう。
 昔は女の子が生まれると桐の苗木を植え、お嫁に行く日にひと棹の箪笥を持たせたという。そんな風習もいまでは親心をしのぶだけである。そういえば先年、亡くなった母が嫁入りに持参した箪笥を削り直してもらい、六十年も前の銀白色の木肌がよみがえったと兄から聞いた。特に奥会津の厳しい自然条件の中で育った桐は材質が緻密で粘りと光沢があるそうだ。
 いつか喜多方市にある桐の博物館を見学したことがあった。そこには、庭でいつも家族を優しく見守っている桐についての風格や文化など全てが展示されていた。
 ホタルブクロに似た花が散ると葉はますます大きく成長する。そして暑い夏の日陰はとてもありがたい。大きな桐の葉が静かに落ちる秋の夕暮れは侘しいが、やがて庭の土を潤す。
 これからもそんな桐の木を尊敬しながらいつまでも見守って行きたいと思っている。

  《庭の重鎮 桐の木》