《わが家で羽化したクロアゲハ》
爽やかに吹き来る緑の風に、少年の日々がほのかに蘇る。今年も庭に、越冬したルリタテハ、テングチョウが訪れた。もうコミスジも飛び始めている。
あの日も補虫網を携え、麦わら帽、三角管、手拭いと、身支度を整えて山へ向かった。
まだ山ひだに雪の残る山道には、もうコツバメ、ミヤマセセリが舞い、ハンミョウが先導をつとめる。緑の静寂の中、蝶を捕らえ、感動に震える手で三角紙に納めた。
梢を矢のように飛び交うメスアカミドリシジミ、夕陽を背に飛び乱れるウウラナミアカシジミ、そしてあの山道の曲がり口のクヌギには、きまってゴマダラチョウ、オオムラサキ、カナブン、スズメバチが群れていた。額に汗して息を殺して樹液に近づいたあの心の高鳴りは何処へ行ってしまったのだろうか。
あれから40数年になるか。蝶に魅せられた少年の日の爽やかな思い、再びかえらぬ楽しき春はまぼろしであったのだろうか。
ああ、今老いた心で、遠き日のあまりに豊かな春を誰に語ればいいのだろうか。
爽やかに吹き来る緑の風に、少年の日々がほのかに蘇る。今年も庭に、越冬したルリタテハ、テングチョウが訪れた。もうコミスジも飛び始めている。
あの日も補虫網を携え、麦わら帽、三角管、手拭いと、身支度を整えて山へ向かった。
まだ山ひだに雪の残る山道には、もうコツバメ、ミヤマセセリが舞い、ハンミョウが先導をつとめる。緑の静寂の中、蝶を捕らえ、感動に震える手で三角紙に納めた。
梢を矢のように飛び交うメスアカミドリシジミ、夕陽を背に飛び乱れるウウラナミアカシジミ、そしてあの山道の曲がり口のクヌギには、きまってゴマダラチョウ、オオムラサキ、カナブン、スズメバチが群れていた。額に汗して息を殺して樹液に近づいたあの心の高鳴りは何処へ行ってしまったのだろうか。
あれから40数年になるか。蝶に魅せられた少年の日の爽やかな思い、再びかえらぬ楽しき春はまぼろしであったのだろうか。
ああ、今老いた心で、遠き日のあまりに豊かな春を誰に語ればいいのだろうか。