エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

待ちかねた新しい緑     

2006-05-07 | エッセイ
  《馬頭観世音の碑 はるかに磐梯山》

 連休も終わる。大鹿桜(5/5ブログ)を見に猪苗代方面へ新緑のドライブに出かけた。走りゆく周囲の新しい春がさわやかだ。
 猪苗代はようやく梅、桜が満開だった。トラクターの音が戻り、掘り返す真っ黒な土に待ちかねたいのちの香りが感じられた。一かたまりの菜の花畑の向こうに、芽吹き始めたカラマツの林がつらなり、点々と白く鮮やかなコブシの花がひときわ美しかった。花びらが春の風にながれていた。一瞬、時が止まり、いつか同じ光景に出会ったような錯覚におちいった。夢の中のような青春の詩の世界がよみがえった。
 ”あはれ花びらながれ をみなごに花びらながれ 
 残雪の雄大な磐梯を仰ぎ深呼吸をする。
 世の中の喧噪をよそに、年々歳々同じように訪れる春。木々は新しい喜びに満ちあふれ、やわらかな陽にほのかに揺れている。
 萌えいづる緑の中で、しばし忘れかけていた豊かな時間を思った。