ベストセラーとなっている藤原正彦著「国家の品格」を読んだ。
著者はこの本の中で、今日本に必要なものについて、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神、そして国家の品格などを挙げている。
著者が以前からその重要性を訴えていた国語教育や、知識よりも情緒、情操の大切さについては、私も教職のいろいろな場面でいつも心がけていたことである。また、人格の完成をめざすとき、「武士道」の根源をなす儒教の教えが、人の倫であることをあらためて考えさせられた。
以下は、新渡戸稲造父祖ゆかりの地「花巻新渡戸記念館」の見学記である
エッセイ
「新渡戸稲造の生きざまを尊敬」 (1999.12)
五千円札の肖像にある新渡戸稲造の記念館を訪ねた。
私が彼を初めて知ったのは、剣道に明け暮れた学生時代に読んだ岩波文庫「武士道」であった。同じ頃購入した全集第八巻「一日一言」は人生如何に生きるかの教訓としてしばらく座右に置いていた。
「われ太平洋の架け橋とならん」で知られる国際人の稲造が、農政学者であり教育者であったこと、さらに新渡戸家が花巻の出身であったことを今回初めて知ることができた。
稲造の母は、明治を生き抜くには学問が必要だと激励した。そして上京して偉くなりなさいと。稲造はそれに応えた。確かに深い学識、行動力、人を愛する信仰心などすべてが尊敬の的であるが、彼の妻が語る思い出に心を打たれた。彼女は夫の生涯にわたる最高度の努力を語っていたのだ。時折彼は「私は、もっと苦しまなければ先祖にすまない。」と妻を悲しませたという。天賦の才能の陰には常に努力があることをまたも知らされた。