透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

フェイルセイフな設計

2006-10-16 | A あれこれ
○ 安曇野ちひろ美術館

○ 安曇野ちひろ美術館外観○ 谷樋の詳細


上の写真は以前載せましたが、今回再度載せます。下の写真は工事中に見学した際、撮ったものです(当時のプリントを接写しました)。どの部分の写真かは分かりますね。屋根と屋根の間の谷樋、上の写真の白い四角い部分の詳細です。

有名建築家の作品を見学すると、こんなのありかな~、と思うようなディテールを目にすることがあります。防水をシールだけに頼っていたり、こんなに薄くて持つのかな、と積雪時の強度が心配になったり、「にげ」をとってなかったり、数年経ったら錆びるだろうな・・・といった具合に。

さて、「安曇野ちひろ美術館」の谷樋に戻りましょう。美術館をいくつかの部分に分節してそこに切妻の屋根を架けています。するとこのように谷の部分ができます。谷樋は雨仕舞い上、弱点になりやすいので、できれば避けたいところです。

内藤さんは実に用心深くこの部分を設計してあります。ドレーンの他にオーバーフロー管を2本立てています。ドレーンがもし詰まってしまってもオーバーフロー管から雨水が排出されるようにしてあるのです。この部分はステンレス防水(ステンレス板の立てはぜ葺きシームレス溶接)、施工さえきちんとしていれば一番信頼できる防水だと思います。冬期の凍結対策としてヒーターも設置する予定なのでしょう。

ところで内藤さんのデビュー作は「ギャラリーTOM」でした(私の記憶が間違っていなければ)。学生のとき見学したと思うのですが、所在地は覚えていません。確か、渋谷区だったと思います。このギャラリーの屋根はよく雨漏りしたらしいのです。そのたびに内藤さんは呼び出されてシールを打ったりして対応したらしい(昔、雑誌で読んだ記憶があります)。そういう苦い経験が雨仕舞いに対して用心深くしたのかもしれません。

『「失敗をゼロにする」のウソ』ソフトバンク新書 で著者の飯野謙次氏は同じ失敗がくり返されないような仕組みを考えなければならない、と強調しています。ま、当然な主張ですが、これがなかなか難しいのです。一度あることは二度ある、二度あることは三度ある。このことを残念ながら経験的に知っている人は多いと思います、私も含めて。