透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

アルゴリズムが創る建築

2006-10-17 | A あれこれ



松本市内の老舗の書店に電話で注文しておいた本が今日勤務先に届いた(写真)。パンフレットは黒川紀章の全18巻!の著作集、全巻セットで105,000円。毎月1巻ずつ刊行されるなら(約6,000円/月)、購入してもいいなと思うが全巻まとめてとなるとちょっと手が出ない。「これから出る本」という近刊図書情報。ここに川上弘美の長編『真鶴』文藝春秋 今月28日発売、という広告が載っている。久しぶりの長編、楽しみだ。

前置きが長くなってしまった。
今回は『けんちく世界をめぐる10の冒険』伊東豊雄建築塾/彰国社について。1辺が13cmの正方形の本。絵本のような装丁の本だが、中身は凄い。
裏表紙には**21世紀のけんちく原理を探る、小さいけれど大きな1冊**とある。本当にそうだ、と思う。

伊東さんの最近のプロジェクトを平易にそして深く語っている。伊東さんの事務所に入所して数年の所員とのディスカッションも収録されている。

**(前略)環境が変わろうが、ある人間が生まれて死のうが、建築は変わらないという大前提があるから、正方形や円という純粋幾何学が一番美しいといわれてきたけれど、そうではない美しい建築があるのかもしれない。(中略)
エコロジーや自然とのかかわりを建築が問うのであれば、純粋幾何学の建築ではなく、別の建築のありようを求める必要がある。僕らはそれをアルゴリズムを使って示そうとしている。**

ここではアルゴリズムが生みだす美学をめぐって議論が展開している。装丁のイメージとは全く異なる高度で知的な議論だ。

僕達は空間を水平、垂直の直交座標によって認知するように「訓練」されている。それ故、建築もそのようにイメージし構成する、水平の床、垂直の壁そして天井とによって。伊東さんが「せんだい」以降に志向している流動的な建築はこのような従来の空間認知の仕方ではイメージしにくいのだという。そこでアルゴリズムという概念が登場するというわけだ。

アルゴリズムは運動を規定するのだと伊東さんは解説し、それが従来の幾何学とは違う流動的な形態をつくりだすのだという。「アルゴリズムをめぐって」というこのディスカッション01は最近の伊東さんの先駆的なプロジェクトを読み解く鍵が示されていて大変興味深い。いい本を入手できた。