(061008)
9.11の実話をベースにしたストーリーは単純だ。センタービル内の人たちの救出作業にあたっていた警官が崩壊したビルの瓦礫の下に生き埋めになる。その内の二人が奇跡的に救出されて家族と再会するという物語。
大災害の後、何日か経過して子供が奇跡的に救出されたりする。新潟中越地震でもそんなことがあった。映画のなかでもトルコ地震で数日後に救出された少女の話を生き埋め状態の二人が交わす。
被災者たちはそういう出来事で大いに勇気づけられ元気が出る。そして被害を見舞う人たちはそこに心の安らぎを見いだす。
そう、この映画はまさにそういう効果を期待したものではないのか。先のような出来事をビジュアルに示すことで、事件によって傷ついた人たちを勇気付けること、そのことのみを狙ったのではないか。この映画はあの事件で傷ついた人たちにとってやはり必要だったのだ。
事件に関してはひとりひとりに物語がある。オリバー・ストーン監督は多くの人たちのなかから、生還した二人とその家族にピンスポットをあてた。
絶望的な状況の中で二人はお互いに励ましあいながら生きようとする、愛する家族のために。
映画ではあの日の事件そのもののトレースをあまりしていない。ツインタワーの崩壊シーンなどは視覚的な記憶として残っているから、観客は必要ならそのシーンを自ら補えばよい。
港湾警察署のベテラン巡査部長(だったかな)のジョン(ニコラス・ケイジ)が救出されて地下から地上に運び出されるシーン。
上方へ引いていくカメラが崩壊したビルで救出作業にあたっている信じられないほど多くの人たちを次第に映しだしていく。おそらく観客はそのなかに自分の姿を置く。救出に関わることができたのだと、自身を慰めたいがために。
エンドロールの最後に流れた静かなピアノ曲を聴いて涙がこぼれた。