透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

薙鎌

2009-11-01 | F 建築に棲む生き物たち



■ 薙鎌 棲息地:神長官守矢史料館@茅野市宮川 観察日091101

藤森照信さんの処女作。鉄平石で葺かれた屋根を貫く4本のイチイの柱。柱には薙鎌が打ち込まれている。

薙鎌については、『いにしえの里 小谷』杉本好文/信毎書籍出版センターの第二編「薙鎌打ち神事から見た姫川流域古代の研究」に詳しい。



薙鎌の形の変遷について、**古い薙鎌は蛇の形で、背にはウロコの形を線で表し、目は穴を明けて表してある。新しいものになるほど太く短くなり、鳥の頭のようになっている。(中略)最も古いと思われるものは、背のウロコを「たがね」で叩いて線で現してあるが、時代が進むにつれて技巧を加えて、切り込を入れるようになって来ている。**という記述がある。

薙鎌は相当古くから伝わる祭器のようだが、まあ、ここではなんだか鳥のようなものが柱に打ち付けてあるという観察にとどめておく。そして、これも建築に棲む「生き物」同様に取り上げておく。


 


ブックレビュー 0910

2009-11-01 | A ブックレビュー



 月間ブックレビュー、10月。小説は1冊も読まなかった・・・。

『名画の言い分 巨匠たちの迷宮』木村泰司/集英社。集英社って美術関連本の出版が多いのかな? この本でレンブラントの波乱万丈な人生を知る。若い頃から晩年まで繰り返し描いた自画像が載っている。それらは人生の浮き沈みをそのまま映し出す鏡のようだ。この画家は内省的な性格だったのかもしれない・・・、自画像を観ていて思った。

『渋滞学』西成活裕/新潮選書。最終第6章「渋滞学のこれから」で著者は理学部と工学部の乖離を危惧し、両分野の橋渡しが出来る人材育成の必要性を説いている。渋滞学は基礎的(理学的)な研究と応用的(工学的)な研究が直接結びついた格好のテーマだということは、本書で理解できた。読み物として面白く書くことの難しさも感じた。

『日本人と日本文化』中公新書。司馬遼太郎とドナルド・キーンの対談を収録した本。10月読了本では、いちばん面白かった。巻末の人名索引には150人くらいの歴史上の人物が載っている。日本の歴史を文化を縦横に語るふたり。その裏付けとしての膨大な知識には改めて驚かされた。

『科学の目 科学のこころ』岩波新書。**膨大な科学的知識の消化よりも、科学の基本にある考え方や意味についての確かな理解こそ、現代の私たちにとっては大切なことだろう。著者は、根っからの理科系でも文科系でもないと自称する生物学者。クローン羊の誕生、ムシの子育て、イギリスでの見聞など、多彩な話題をおりまぜながら、科学と人間と社会について考えるエッセイ集。** (カバー折り返しの本書紹介文)

10月の読了本に狭い専門領域を深くというスタンスで書かれたものよりも、対象を広く取り上げたものを好むという傾向が出たかな・・・。


繰り返しの美学

2009-11-01 | B 繰り返しの美学



 今回の繰り返しの美学は長野県松川村の多目的交流センター「すずの音ホール」の屋外施設。具体的な用途は不明。

方杖をついた片持ち梁のフレームはごく普通のデザインだが、それがゆるやかに弧を描きながらリズミカルに繰り返されている。もう何回も書いたが、凡庸なデザインでもそれを繰り返すことで美が生まれる。

このデザインをしばらく観察していて、アルウィンの片持ち梁の構造的な処理を思い出した。RCの柱頭に片持ち梁をピン構造で載せ、梁の後端を下方に鋼管で引っ張ってバランスさせている。

デザインは多様だ。