透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

週末東京 その5

2009-11-08 | A あれこれ

■ 三菱一号館@千代田区丸の内



三菱一号館の復元プロジェクトの詳細な紹介展示「一丁目倫敦と丸の内スタイル展」を観た。



ジョサイア・コンドル設計の三菱一号館は明治27年竣工。日本で最初の近代的なオフィスビルだったが昭和43年に取り壊された。それが、今回の復元プロジェクトによって甦った。その詳細な展示を観た。

写真展「一号館アルバム」 建設に関わった多くの人たちを3人の写真家が撮った。あの梅佳代さん(人の表情を撮らせたらピカ一)がその内の1人だった。どうりで、ね。

3階の展示室は天井がガラス張りで小屋組みが分かるようになっていた。洋小屋組みにもいくつか種類があるが、これは松材を使ったクイーンポストトラスという構造だそうだ。

今回の復元工事では奈良県の宮大工が造ったそうだ。きちんと確認しなかったが、地元の加工場で刻んで東京まで運んだようだ。地組みしてクレーンで吊り上げる様子がビデオで流れていた。

建設場所は昔、日比谷入江と呼ばれ、海だったところ。建設には松杭が1万本!も使われたそうだ。明治24年の濃尾地震の教訓から耐震上の工夫もされていたそうで、関東大震災でも大丈夫だった、とのこと。ならば、そのまま復元しても問題ないように思うが、現行の建築基準法をクリアするように免震構造が採用されている。

小さな金物類まで、当初の設計図や写真、解体時の保存資料から忠実に再現したそうだ。

ヨーロッパでは当り前のこととして行われている復元、保存が日本では極めて稀な出来事というのも、なんだかな~。

三菱一号館は東京駅から徒歩5分。東京駅の復元工事と東京中央郵便局の剥製保存というか、高さ200mの超高層ビルに串刺しにされる焼き鳥保存工事も進んでいた。


週末東京 その4

2009-11-08 | A あれこれ


■ 丸の内オアゾの丸善本店、その4階にあるカフェ。都会的で上品でちょっと気取った雰囲気。書店で買い求めた本をここで読む。窓外に目をやると音も無く電車が流れて行く・・・。カールおじさんも時にはこんな空間で過ごす、いいじゃないか。



『自然界の秘められたデザイン』河出書房新社。**数理的秩序に満ちた美しい世界はなぜ生まれるのか?**帯に書かれたこんなコピーをみたら買わないわけにはいかない・・・。

「数理的な秩序」、繰り返しの美学でこのことばを何回使ったことか。混沌としていて、秩序など存在しないかに見える自然。実は自然にも数理的な秩序が隠れている。それも信じられないくらい多く・・・。それはなぜ?どうして?


週末東京 その3

2009-11-08 | A あれこれ



 隈研吾展@ギャラリー間

週末東京、根津美術館からDragon Fly Cafe、そして乃木坂にあるギャラリー間へ。TOTOのショールームに併設されているギャラリーで隈研吾展を観た。

「生命体の生成に倣う」建築デザインのプロセス。そこから導き出される環境に最適な建築。

抽象的なもの、つまり数理的な、幾何学的な単純なルールに拠って構成されてきた近代建築から有機的なもの、生命体の生成のプロセスをモデルにして構成する建築へ。

会場には多数のスタディ模型が展示されていたが、スペインのグラナダに建設中だという「グラナダ・パフォーミングアーツ・センター」の計画が興味深かった。

合板で作られた大型模型は少しだけ抽象化された細胞の集合体の様相。変形した六角形を「有機的」に重ねて構成したホールの客席はいままで観たことのない空間(下の写真:会場で配布されたパンフレットより)。ボイドスラブコンクリート構造で解いたそうだ。



伊東豊雄さんの「台中メトロポリタン・オペラハウス」は胃袋をいくつも繋げたような空間、クラインの壺の集合のようで私の理解を越えてしまっているが、隈さんのグラナダの計画は、なるほど!だった。
生命体の生成プロセスをモデルにしたアルゴリズムによる建築デザイン。そこから生まれてくる形態・・・。



伊東さんの「台中」、隈さんの「グラナダ」そして礒崎さんの「フィレンツェ新駅」(『フラックス・ストラクチャー』佐々木睦朗/TOTO出版より)。

今や、建築デザインの方法論としても、到達点としてもオーガニックがキーワードとなった。
そのことを実感した建築展だった。



 


週末東京 その1

2009-11-08 | A あれこれ

■ 根津美術館

東京南青山に先月の7日、根津美術館が新装オープンした。隈研吾さん設計のこの美術館を「閉じて開く」というキーワードでざっくりと。

「閉じる」

敷地の縁に設えた柔らかな竹垣のスクリーン。その端からそっと内側に入ると「露地」がモダンにデザインされていた。

黒い那智石と整形された石の床、さらし竹の壁、木毛板の軒天井によって構成された「露地」。銀閣寺のアプローチ空間と同じく直線的でシンプルな構成。


根津美術館の「露地」

銀閣寺の「露地」

日常から非日常への導入のための空間として、やはりこのくらいの長さが必要ということだろう。この露地の先には一体どんなシーンが展開しているんだろう・・・、というワクワク感を演出する手法。

「開く」

美術館のエントランスからホールに入ると美しい露地庭と一体化した「和」空間が展開していた。

スチールの細い柱しか視界を遮るものがない。斜めの天井を内から外へと連続させ、来館者の視線を豊かな緑へ誘導している。



隈さんはオーソドックスな「和」の手法によって魅力的な空間を創出した。