透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

土御門殿とエントロピー

2012-02-18 | A 読書日記



 今年は古典に親しもうと思っています。外国語で書かれた文章ではないので、大意はなんとなく理解できるでしょう。「読書百遍意自ずから通ず」。でも読みたい本がたくさんあるので、じっくり精読するというわけにはいきませんが・・・。

**秋のけはひ入り立つままに、土御門殿のありさま、いはむかたなくをかし。池のわたりの梢ども、遣水のほとりの草むら、おのがじし色づきわたりつつ、おほかたの空も艶なるにもてはやされて、不断の御読経の声々、あわれまさりけり。**(12頁)

しばらく前に買い求めた『紫式部日記』山本淳子訳注/角川ソフィア文庫を読み始めました。

「土御門殿(つちみかどどの)」って?**藤原道長の邸宅。中宮彰子が出産のため滞在中。**という注がついています。読んでいると「おのがじじ」にも?マークがついてしまいます。ネットで調べてみると・・・、己(おの)が為(し)為(し)という意味ですか、なるほど。こんな基礎知識もない状態で背伸びして原文を読もうなどと考えないで、後半の山本淳子さんの現代語訳だけを読むことにした方がいいかもしれません。

現代語訳です。**秋の気配が立ちそめるにつれ、ここ土御門殿のたたずまいは、えもいわれず趣を深めている。池の畔の樹の枝々、遣水の岸辺の草むらが、それぞれ見渡す限りに色づいて、秋はおおかた空も鮮やかだ。それら自然に引きたてられて、不断の御読経の声々がいっそう胸にしみいる。**(204頁) 



山本淳子さんの訳文をこの本で読んで、うまいな~、と思いました。で、『紫式部日記』を読んでみることにしたのです。

紫式部はライバル清少納言を批評する文章も書いています。現代語訳**清少納言ときたら、得意顔でとんでもない人だったようでございますね。あそこまで利功ぶって漢字を書き散らしていますけれど、その学識の程度も、よく見ればまだまだ足りない点だらけです。**(283頁)

かなり厳しい批評です。そして**このように(申してまいりました)あれやこれやにつけて、何一つ思い当たる取り柄もなく生きて参りました人間で、そのうえ特に将来の希望のない私こそ、慰めにするものもございません。が、自分を寒々とした心で生きる身とだけは、せめて思わずにおりましょう。(後略)**(284頁)と続けています。 強がりでしょうか・・・。

『生命を捉えなおす 生きている状態とは何か』清水博/中公新書。「マクロな状態とエントロピー」「動的秩序の自己形成」・・・。

土御門殿とエントロピー 全く違う分野の2冊を同時に読み進むのは私には無理、『生命を捉えなおす 生きている状態とは何か』を先に読むことにします。