**青・黄・赤・白・黒が基本となる五色だが、青・黒の代わりに樺・紫・緑などを含める場合など差異がある。** 仏教の五色についてウィキぺディアから引用した。
撮影日130505
朝日村の光輪寺薬師尊祭典(地元ではお薬師様のお祭りと呼ばれ、5月4、5日に行われる)の吹き流しの色は青・黄・赤・白と黒に替わる樺の5色。 これはウィキペディアの説明通り。
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■ 村上春樹の最新作『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の主人公・多崎つくるは仲良し高校生5人組のひとりだった。
多崎以外の4人には名前に色が含まれているという共通点がある。2人の男子の姓は赤松と青海、2人の女子は白根と黒埜(くろの)だ。作中、4人はアカ、アオ、シロ、クロと呼ばれている。
この4色は陰陽五行説や仏教のシンボルカラーと符合していて、無色の多崎の色は黄色だとする細野透氏(ジャーナリスト)の説をネットで読んだ。
さらに細野氏は多崎つくるの恋人の沙羅という名前は沙羅双樹から採った、としている。釈迦が入滅したとき周りにあったという樹の名前だ。
なるほど、おもしろい説だなと思った。
また、「多崎」は東日本大震災の被災地・東北のリアス式海岸のことを指していて、色彩のないというのは、震災後の荒涼とした光景を表現したものという説もネットで読んだ。田崎ではなくて多崎というところがミソというわけだ。多崎はたさきではなく、たざき。
村上春樹の作品は暗喩が多用されていて、いろんな解釈ができるのも特徴。
多崎つくるは駅舎に興味を持つ鉄ちゃんで、大卒後東京で駅を設計する仕事に就く。ものがたり後半の巡礼の旅ではクロをフィンランド(ノルウェーではない)に訪ねる。多崎つくるはフィンランドでは鉄道ではなく、レンタカーで移動しているが、このことについて、彼は鉄道マニアではない、などという突っ込み記事もネットにあった。鉄道マニアなら鉄道を利用するはずだという指摘。なるほど、駅鉄だろうが撮り鉄だろうが乗り鉄が基本でしょ、というわけか・・・。
さて、「登場人物の名前の色は何から」について、私の珍説を披露したい。
庄司薫という作家に薫くんシリーズの4部作がある。『赤頭巾ちゃん 気をつけて』は下の写真で分かるように芥川賞を受賞した作品。4部作のタイトルには赤、青、白、黒が含まれている。村上春樹はこの4部作の色を最新作にとり入れたのだ。これホント!?
まあ、こんな根拠のない珍説をでっちあげるのもいいでしょう・・・。
評論家の川田宇一郎氏は「由美ちゃんとユミヨシさん 庄司薫と村上春樹の『小さき母』」という評論を書いている。氏はこの評論でデビューし、群像新人文学賞評論部門優秀賞を受賞している。
由美ちゃんは4部作の主人公・薫くんのガールフレンドの名前。ユミヨシさんについては春樹ファン、ハルキストには説明不要でしょう。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』という長いタイトルの一部「巡礼の年」はリストのピアノ独奏曲集からとられているが、この名曲を庄司薫の奥さんのピアニスト・中村紘子も弾いていて、音楽好きの村上春樹は聴いているのでは・・・。
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村上春樹のお祖父さんは京都の寺の住職だそうだから、仏教の五色から引用したという先の説が当たっているのかも。