透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

アイストップ 常念岳

2013-05-25 | A あれこれ



春のフォトアルバム 松本市内から望む常念岳 (左側の稜線の端部に槍ヶ岳の先端が見えている)

 『見えがくれする都市』 槇 文彦他/鹿島出版会SD選書に収録されている論考「微地形と場所性」で若月幸敏氏は**日本には古くから周囲の山を生けどって借景とする造園手法があった。この場合遠景の山は単なる背景ではなく、より積極的に庭園内部の構成と関係付けられている。**(118頁)と日本の伝統的な造園手法を紹介し、この手法が江戸市街地の町割りにも活かされたのではないかと述べている。

通りの軸線方向に富士山を仰ぐような計画が江戸のまちづくりにみられる。

私が昔住んでいた東京都国立市には富士見通りと名づけられた通りがあるが、アイストップ(eye-stop)として通りの正面に富士山があった。計画的につくられた町にこの手法が使われたのだろう。

同様のことが地方都市でも行われていたのではないか。「常念通り」の正面に座る常念岳を見るとこの思いを強くする。だが、そのような計画性は認められないという調査結果(どのような分析手法でなされたのか分からないが)を以前新聞で読んだ。

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北アルプスの残雪と地肌が形づくる雪形の季節になった。松本市内からは見ることができないが、常念岳に出現する常念坊という雪形はよく知られている。他にもいくつもの雪形が北アルプスのあちこちに出現する。

この地方の人々は北アルプスの秀峰を朝晩仰ぎ見て暮らしている。恵まれた環境だと思う・・・。


 


「伊勢神宮―東アジアのアマテラス」

2013-05-25 | A 読書日記



■ 今年は伊勢神宮の式年遷宮の年。690年に始まり今回で62回目。その一連の行事のひとつ、完成した正殿の外構に敷く白石を奉献する御白石持行事に7月末に参加を予定している。

この機会に伊勢神宮に関する本を読もうと手にした『伊勢神宮―東アジアのアマテラス』千田 稔/中公新書を読了した。本書は序章から終章まで7章から成るが、第1章の「アマテラスの旅路」と第2章の「中国思想と神宮」を興味深く読んだ。

「天空を照らしておられる太陽神(日神)」という意味の天照(アマテラス)大神。記紀神話で語られる天孫降臨神話、その垂直的な降臨のイメージを水平方向の到来伝承と読みかえるのがふさわしいと現実的(?)に考える著者は**ホアカリノミコトという海洋民の神がアマテラスという神格を獲得する直近の神とみ、九州南部の天孫降臨伝承から、中国南部に私の視線は投げられる。**(50頁)と述べている。

中国の道教は北極星を象徴化、最高神としているとのことだが、この「星の宗教」が日神アマテラスの祭祀にとりいれられたという指摘。つまり**星の宗教の太陽の宗教への変換的受容**(66頁)。

内田 樹さんは『日本辺境論』/新潮新書で「(華夷秩序に於ける)中華の辺境民」でOKだと自ら認めているからこそ「漢」字と自国で工夫したかなを併用して平気なのだと指摘した。このメンタリティは古代の日本人の心も占めていたようだ。たぶん今よりずっと強く・・・。