■ **いまでも、はっきり、覚えている。後姿の、帯の模様がいつもと逆になっていた。左に余分を残して、右寄りりに柄が来るように締める奥様の帯の、独鈷の筋が左寄りになっていたのだ。そんなことはないと、人は言うだろうか。いつも着なれている帯を結ぶのに、左右や天地が逆になるようなことはないと、思うだろうか。それを人は、若かったわたしの、妄想だと言うだろうか。**(192頁)
『小さいおうち』中島京子/文春文庫のこのくだり、先月はなんとなく読んでいた、具体的にイメージもしないで・・・。
① ②
この状況を紙でつくってみた。左の①のように結んでいた帯だがその日、外出して帰って来た時には右の②のようになっていたというのだ。これでタキさんは奥様の不倫に気が付くというわけ。でも、こんなことって本当にあり得るのだろうか・・・。
このようなことが起きるためには、● から巻き始めている帯をその時は■から巻き始めたということになるのでは・・・。普段とは逆、つまり手先ではなく垂から巻き始めてしまったと。
もうひとつの可能性は帯の裏表同じということだが、そういう帯ってあるのかな? それに帯には折り目がついてしまうから、どういうのか、折り紙でいえば、谷折りになってしているところを山折りすることになるはずだけど・・・。だから気がつくと思うけどな。
こういうことってあり得ないんじゃないかな・・・。それとも慌てふためいて、結び方がおかしくなって偶々できたのかな・・・。
いや、タキさんの妄想か? でも**それから二度、奥様は板倉さんのアパートに出かけた。二度とも洋装で、(後略) **(193頁) とあるからな・・・。この部分を映画ではどのように表現しているのだろう。観て確かめなくては。もし、①から②のようになっていたら、できるということなんだな~ぁ。
(このイラストはさが美のホームページより転載させていただきました。)