■ 山田洋次監督によって映画化された中島京子の直木賞受賞作『小さいおうち』をようやく観ることができた。
私の関心は帯の柄のこと(→過去ログ)。松たか子演ずる奥さんが玩具会社に勤める夫の部下でデザイナーの板倉(吉岡秀隆)に惹かれて不倫関係になるが、そのことに女中のタキさん(黒木華)が、帯の柄で気がつくというくだり。
出かける時は右側にあった帯の一本独鈷の柄が板倉の下宿を訪ねて帰って来た時は左側にあったというのだ。それでタキさんは奥さんが板倉のところで帯を解いたことに気がつくというわけ。
でも柄が左右にずれる、そんなことがあり得るのだろうかと疑問だったが、どうやら帯の裏表が同じ柄でそうなったということのようだ。帰って来た奥さんが部屋で帯を解くシーンがあるが、そこでこのことが分かる。だが、このとき胴に巻いた帯の柄も上下にずれるのでは・・・。映画ではこのことを見逃して確認できなかった。
この映画ではいろんなことが説明的だった。奥さんが板倉に惹かれていることが観ていてすぐ分かるし、板倉もまた奥さんが好きなことも分かる。説明的な表現をしないと内容を理解してもらえないということなのかもしれないが、細かな描写で表現してもよかったのでは、と感じた。
昔観た映画では、何のことなのか、何を表現しているのかよく分からないことがあった。今の映画は総じて分かりやすくなったような気がする。
帯の柄のことは原作に忠実に描いているが、お太鼓の柄が上下に少しずれるということなら締め方であるだろうから、そのことに気がつくということにすればよかったのでは。帯を締めてからタキさんに見てもらっていたということにしていれば、柄の少しのズレにも気がつくだろうから。
原作でも映画でもなぜだろうと考えさせるのは、奥さんが板倉に渡すようにタキさんに託した手紙のことだ。「なぜタキさんは板倉に奥さんの手紙を渡さなかったのか」 タキさんも板倉のことが好きだったから、というのが私の見方だ。
戦争によって不本意な生き方を強いられた人たちの不幸を描いた映画、と解釈しておこう・・・。