透明タペストリー

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「モンシロチョウ キャベツ畑の動物行動学」

2014-07-26 | A 読書日記



■ 数年前に読んだ本、『モンシロチョウ キャベツ畑の動物行動学』 小原嘉明/中公新書をまた読む。

**チョウの雄は自分の子を少しでも多く残そうと、実に多種多様な戦術を駆使して競争しているのです。**(137頁)  チョウの結婚戦略がこれほどすごいとは・・・。おそらく熱心さにおいてはヒトに勝るだろう。

ヒトにはモンシロチョウの翅の色の違いは分からないが、モンシロチョウには違いがはっきり分かる。「違いの分かる雄(オトコ)」ということだが、ヒトより視力(というか分解能かな)が優れているわけでもないだろうに、なぜ? どうして?

答えはヒトとモンシロチョウとでは可視領域が違っていて、モンシロチョウはヒトには見ることができない紫外線域も見ることができるということ(本書では紫外色とよんでいる)。そしてモンシロチョウの雌と雄で翅の紫外線の反射率が違っていて、全く違う色に見えているということ。

本書にはモンシロチョウの紫外線写真が載っている。モノクロ写真を見ると雌と雄とでは翅の見え方が全く違う。雌の翅は白く、雄の翅は黒く写っている。雌の翅(正確には後翅の腹面)は紫外線を30~35パーセントくらい反射しているが、雄の翅はほとんど反射していないという。これは雌と雄で鱗粉の構造が違うことによるらしいが、翅の紫外色の化学的メカニズムはまだ明らかにはなっていないという。

モンシロチョウにもなんと個性があって、1日の婚活開始時刻や時間が違うということがキャベツ畑(ヒトなら渋谷の街あたりか)を観察して明らかになったことも紹介されている。嫁さん探し、1日30分というちゃらんぽらんな雄もいるし、その数倍も探す熱心な雄もいるとのこと。

本書の後半に、雄は交尾後、雌の交尾口を封じるということが紹介されている。貞操帯によって他の雄との交尾を防ぐという何ともすごい(?)技を使っているとのこと。でも貞操帯を取り除いてしまう雄もいるとか、って何だか夜のアルコールなブログのようになってきた・・・。

老齢雌の焦りも観察されることが本書に紹介されているが、ここでは省略。週刊現代、週刊ポストの記事になってしまいそうだから。

自作の簡単な装置による実験・観察によって明らかにされるモンシロチョウの婚活実態、結婚戦略。緻密な論考を書いているが分かりやすい。難しいことを分かりやすく書く、一般読者向けの良書の条件をクリアしていると思う。


 
白い翅のチョウは、モンシロチョウしか知らない。この後翅の腹面、モンシロチョウですよね。