■ 12日(土曜日)の早朝、24時間営業の書店で『地図から読む江戸時代』上杉和央/ちくま新書を買い求め、いつも利用する松本6時51分発のスーパーあずさで東京に向かった。
車内販売のコーヒーを飲みながらの読書は至福の時。 火の見櫓が気になって窓外に時々目をやりながら読んだ。
都内では神社巡りの合間にカフェで休憩しながら読み、2日間で読み終えた。
江戸時代の日本地図と聞くと伊能忠敬の正確な地図がまず浮かぶ。江戸時代の日本地図の到達点と言ってもいいかもしれない。伊能図に到達するまでの過程では様々な姿の日本が示された。
地理的な空間認識を表現する地図は時代と共に変化してきたことを改めて本書で確認する。
**江戸時代は大きく「行基式日本図の時代」「流宣日本図の時代」「赤水日本図の時代」という三つの波で時期区分することができる。僧侶(ないし菩薩)たる行基、絵師たる流宣、学者たる赤水と、地図に関する人物だけを追ってみても、その波の特徴がおおよそ摑めて面白い。
ただ、それは単に面白いだけではない。地図は地図だけで存在するのではなく、作者があり読者があっての地図であるということ、ひいては地図は人々の生きた社会や文化と遊離した存在ではなく、それらと密接に関係した存在であるということを、改めて教えてくれるものである。**(221頁)
少し引用が長くなったが、このくだりが本書の要点だろう。
古い時代の「正確ではない」地図がいくつも載っているが、それらは皆なかなか味わい深い。
石川流宣 長久保赤水