透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「オデッセイ」の原作「火星の人」を読む

2016-02-13 | A 読書日記



 映画「オデッセイ」の原作、『火星の人』アンディ・ウィアー/ハヤカワ文庫SF を早速読み始めた。映画を見た時、原作も読んでみたいと思った。

海外の作品はあまり読んでこなかった。登場人物が多いとカタカナ名前は覚えられないし、描かれている場面というか、場景(この漢字表記がよさそう)がなかなか浮かばないから。それに昔の訳文は硬い表現で、読みにくいということもあったかもしれない。まともに読んだのは中学生の時の「罪と罰」くらい、いやそんなこともないか。

さすがに今の作品は訳がこなれていて読みやすい。この小説の訳も**ぼくは痩せても枯れても植物学者だぞ!みなの者、ぼくの植物学パワーを畏れよ!**(31頁) **そしてスーツのタンクから純酸素を出して袋をふくらませた。すると空気調整器は「なんてこった!すぐにO2を取り除かなくちゃ!」と思ったわけだ。**(73頁) と、こんな具合。

火星探査中に猛烈な砂嵐に遭って、6人のクルーのうち主人公のマーク・ワトニー以外はハブ(居住施設)からMAV(宇宙船)に移ることができたが、マークは**アンテナは弾丸がバターを貫く見たいにスペーススーツを貫き、ぼくは脇腹を引き裂かれて生涯最悪の激痛を感じた。**(14頁)のだった。ここで他のクルーは助けるのは無理だと判断したのだろう。NAVは猛烈な風で傾いてしまう(ある角度を越えてしまうと離陸できなくなってしまう)前に彼を残したまま離陸せざるを得なかったのだ。

ひとり火星に取り残されたマーク・ワトニーは**これを読んでくれる人がいるのかもわからない。たぶん、いつかはだれかが見つけてくれるだろう。一〇〇年後かもしれないが。**(9頁)と思いつつ、ログをパソコンに向かって書く。それを小説として読む、という趣向。もちろん地球上の出来事の記述スタイルは違うが。 

読みだして、いや、映画を見ていた時にも思ったのは、火星に取り残されたのがひとりではなくて、2人、3人だったらどうだろう、ということ。きっと「♪ ひとりじゃないって すてきなことね~」って天地真理のような感想を抱く人間ドラマが火星上で展開されることになって、全く違うストーリーになっただろう。いや、それだとジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』の人数少なめ火星バージョンになってしまうかな・・・。

火星にひとり取り残されたからこそ、**ぼくが生きていることをみんな知っているんだ!(193頁) (中略)また人と話せる。史上もっとも孤独な人間として三ヵ月すごしてきたが、ついにそれもおしまいになる。**(194頁)という感動を味わうことになったのだ!

今はこのおもしろいSFをただ読み進むだけだ。