透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「昭和の漱石先生」

2020-04-15 | A 読書日記

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 **日本は何とか戦争からは免れ、第二次世界大戦にも参戦していないので、その分国家予算において軍事費は相対的に抑えられていた。戦災は一切なく、漁夫の利である経済的繁栄を謳歌できている。**(219頁)

『昭和の漱石先生』小島英俊(文芸社文庫2020)は昭和20年まで生きた夏目漱石が、昭和史の裏で暗躍する姿を描く「歴史改変小説」。

1916年(大正5年)に49歳で人生を閉じた漱石。この小説で漱石は1945年(昭和20年)の8月15日まで生き延び、戦争を回避するために要人たちに働きかける。奮闘努力の甲斐が無かったのは寅さん、だが漱石の場合は奮闘努力の甲斐あって、上掲した引用文で分かるように第二次世界大戦への参戦を回避できる。

昭和史に詳しい人にはこの小説は面白いだろう。詳しくなければ登場人物も分からないだろうし、史実のどこを変えたのかもよく分からないだろうから、興味もわかないのではないか。私は後者。何でも読んでやろう精神で読んではみたが・・・。