透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

笑う門には福来たる

2020-07-16 | A あれこれ

 今朝(16日)通勤の車で聞いたNHKラジオ第一の番組の話題。

笑わない高齢者は毎日笑う高齢者に比べ、要介護状態になるリスクが1.4倍高くなる。このようなことが名古屋大学の研究チームが介護を受けていない高齢者14,000人に対して行った調査で分かったそうだ。

日常生活で声を出して笑うことは介護状態になるリスクを下げる効果がある。そうか、毎日お笑い番組を見て大いに笑えばいいのか・・・。このことで思い浮かぶのは「笑う門には福来たる(*1)」ということわざ。

大いに笑うべし、と言われても、自然災害は多発するし、コロナ禍は収束する気配すらないし・・・。笑うことができる、それだけで幸せなんだなぁ。

笑うと免疫力が高くなることも医学的に実証されているらしい。


*1「福来る」と表記するようだが、これできたるとはなかなか読めないので「福来たる」とした。


朝カフェで「黄いろい船」を読む

2020-07-16 | A 読書日記

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 昨日(15日)の朝カフェで『黄いろい船』北 杜夫(新潮文庫1978年発行)を読んだ。ブログに記録が残るだけでも既に2回読んでいる。初めて読んだのは1978年の11月、もう40年以上の前のことだ。5編の中短編が収められているが、表題作の「黄いろい船」について。

12年間勤めた会社を解雇された男は妻と4歳の娘・千絵ちゃんとアパートで暮らしている。千絵ちゃんはどういうものか栗がとても好き。

**「で、落ちてるのかい、実が」
「そう、ガレージの前にイガが十ほど落ちてたわ。でも、みんな空なのよ。近所の子がとっちゃうのでしょうね」
「イガでも持ってくればいいのに」
「チエちゃん、イガ、きらい」
と、女の子が口をはさんだ。
「チエちゃんの指、イガが刺したの」
「あんまり急いでさわるからよ」
と、妻はまた笑った。**(26頁)

ほのぼのとした会話が実にいい。次のようなシーンも。

**三人の蒲団を敷くと、部屋は一杯で、女の子の小さな蒲団は壁際におしつぶされたような形で敷かれていたが、そこから寝言のような声が洩れた。
「パパ」
と、小さく言った。
「うん?」
と、男は狼狽したようにこたえた。
「オシッコかい?」
女の子はかぶりをふり、ふいにニッコリと笑ってみせ、それから横をむいて枕のわきにおいてあるクリさんの人形をちょっと撫でてから、さらに満足したように枕に頭をのせて目をつぶった。**(17頁)

「黄いろい船」は北 杜夫が自作のなかで最も好んだ作品のひとつだそうだが、私もこの作品が好きだ。

このような作品を41歳の時に描いたとは・・・。北杜夫は純真な少年のようなこころをずっと持ち続けていた作家だった。

北 杜夫の作品はこれからも読むことになるだろう。


2011.10.21と2015.08.19の記事転載加筆。 **は引用範囲を示す。

カバーは串田孫一さんの作品。まつもと市民芸術館館長の串田和美さんのお父さん。