透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「ウニはすごい バッタもすごい」

2017-06-21 | A 読書日記



 先日NHKのラジオ深夜便の「明日へのことば」で聞いた生物学者・本川達雄さんの話は実に興味深く、おもしろかった。それで書店で本川さんの近著『ウニはすごい バッタもすごい』中公新書を買い求めて読み始めた。

本川さんの『ゾウの時間 ネズミの時間』中公新書を読んだのは93年2月のことだった。ということは、それからもう24年経っていることになる。時の経つのは本当に早い。

**動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。(後略)**『ゾウの時間 ネズミの時間』のカバー折り返しにこの本の内容が紹介されている。興味深く読んだという記憶がある。

『ウニはすごい バッタもすごい』もおもしろい。

**クチクラは昆虫の体という「建築物」をつくっている材料であり、建築材料として見れば、繊維と基質という異なる素材が組み合わされた繊維強化複合材料とみなせるものである。(中略)繊維のようにひも状のものは、引っ張られたら強く抵抗するが押されたらへにゃっと曲がって抵抗できない。逆に基質のように塊になったものは、押しつぶす力(圧縮)にはそれなりに強いが、引っ張られるとボソッと切れてしまい、もろい。(中略)繊維と基質はそれぞれの弱点を持っているのだが、二つを組み合わせると弱点を補い合って、引っ張りにも圧縮にも強い材料になる。**(39頁)

この説明は繊維を鉄筋、基質をコンクリートに読み替えれば、このまま鉄筋コンクリートにも当てはまる。

自然が創り出したものは理に適っているから、人が後からつくるもののお手本になっている。以前書いたが、鉄骨造の柱と梁の取り合い部分は竹によく似ている。竹の節は鉄骨柱のダイヤフラムで、竹の枝は節から出ているが、鉄骨造の梁もダイヤフラムから出す。

コンクリート充填鋼管にはバナナという自然が創ったお手本がある。バナナは皮をむく前に折ろうとしてもなかなか折れない。皮をむいてしまえば、簡単に折れるのに。

**(前略)クチクラの繊維を一定方向にそろえて基質に埋めて薄板状にし、その薄い板を何枚も、少しずつ繊維の方向を回転させながら重ねて多層構造にしている。**(39頁)

建材のべニア板はこれと同じ発想でつくられているが、繊維方向を縦横90度変えて貼り合わせているだけ。昆虫のクチクラの方がすごい。

クチクラ(ラテン語がもとになった言葉)は昆虫の外骨格(脊椎動物の場合は内骨格)をつくっている材料で、英語ではシャンプーのCMによく出てくるキューティクル。

クチクラは昆虫の体をすっぽりと覆っている箱のようなものだが、羽を1秒間に100回を超すほど速く振動させることができるのもこのクチクラのおかげだという。この本にはそのメカニズムが図解を交えて分かりやすく説明されている。

確かにバッタはすごい!!

この本はおもしろい。


 


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