透明タペストリー

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安部公房の「砂の女」を読む

2024-11-26 | A 読書日記


 安部公房の『砂の女』(新潮文庫)の発行は1981年2月25日。この頃も安部公房を読んでいたから直後の1981年3月2日に買い求めて読んでいる。このブログを検索して、2008年12月、2020年12月にも読んでいることが分かった。ブログを始めた2006年より前にも読んでいると思う。

人間の存在を根拠づけるのもは何か、人間は何を以って存在していると言うことができるのか・・・。人間の存在の条件とは? 安部公房はこの哲学的で根源的な問いについて思索し続けた作家だったと、『箱』の読後に書いたが(2024.05.29)、『砂の女』にもこのまま当て嵌まる。

砂浜へ昆虫採集に出かけた男が、砂丘の大きな窪みの底の一軒家に閉じ込められる。脱出を試みる男と、男を引き留めておこうとするその家で暮らす女。蟻地獄的状況。最後に、男は脱出可能な状況になるが、脱出せずに女とともに留まる。その結果、男は失踪者となる。

この小説の最後のページに主人公の男・仁木順平を失踪者とするという審判結果が表示されている。奥さんの失踪宣告の申立に対する家庭裁判所の審判だ。

**(前略)不在者は昭和30年8月18日以来7年以上生死が分からないものと認め、(後略)(230頁)** 7年以上生死が分からないと死亡したものとみなされる。仁木順平は自らの意志で砂の穴の底の家で生きているのに。この小説のテーマがここに象徴的に示されている。

小説ではそのプロセスが描かれているが、なるほど、ありかもなと思わせ、説得力がある。安部公房の作品の中では読みやすい。


新潮文庫23冊 (戯曲作品は手元にない。再読した作品を赤色表示する。*印の作品は絶版)今年(2024年)中に読み終えるという計画で3月にスタートした安部公房作品再読。11月25日現在19冊読了。あと4冊!

新潮文庫に収録されている安部公房作品( 発行順)

『他人の顔』1968年12月
『壁』1969年5月
『けものたちは故郷をめざす』1970年5月
『飢餓同盟』1970年9月
『第四間氷期』1970年11月

『水中都市・デンドロカカリヤ』1973年7月
『無関係な死・時の壁』1974年5月
『R62号の発明・鉛の卵』1974年8月
『石の眼』1975年1月*
『終りし道の標べに』1975年8月*

『人間そっくり』1976年4月
『夢の逃亡』1977年10月*
『燃えつきた地図』1980年1月
『砂の女』1981年2月
『箱男』1982年10月

『密会』1983年5月
『笑う月』1984年7月
『カーブの向う・ユープケッチャ』1988年12月*
『方舟さくら丸』1990年10月
『死に急ぐ鯨たち』1991年1月 ※1 

『カンガルー・ノート』1995年2月
『飛ぶ男』2024年3月
『(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集』2024年4月


※1 『死に急ぐ鯨たち』は「もぐら日記」を加えて2024年8月に復刊された。



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