透明タペストリー

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「小さな家の思想」を読む

2022-06-20 | A 読書日記

 
『小さな家の思想』長尾重武(文春新書2022年)   『方丈記』鴨長明(岩波文庫2001年25刷)


復元された鴨長明の方丈の庵 撮影日2015.12.23

 京都の下鴨神社の境内に鴨長明の方丈の庵が復元されている(確かめてはいないが今でもそのままあると思う)。この庵を2015年の12月に見ている。方丈記の詳細な記述をもとに中村昌生氏の監修により復元されたという。方丈の庵は簡単に分解することができ、好きなところに運び、組み立てることができるので、プレファブシステム、モバイルハウスのルーツとして取り上げられることもある。学生の時にこのような説明を聞いた(ような気がする。あるいはその後の学習の成果かも)。

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 朝カフェ読書は週2回、火曜日と金曜日の午前の早い時間帯と決めているけれど、昨日(19日)の日曜日も朝カフェ読書した。松本は渚のスタバの開店は朝7時半、読む本は持参していたが少し早く着いたので隣のTSUTAYA北松本店で本を探した。新書の新刊コーナーで『小さな家の思想』長尾重武(文春新書2022年)を手にした。「方丈記を建築で読み解く」という副題に惹かれて買い求め、さっそく朝カフェで読み始めた。

方丈記は世の無常を綴ったエッセイ(同じ意味だが随筆の方がふさわしいかな)として知られているが、本書のカバー折り返しには**「終の棲家」としての方丈庵を作るまでの「家」の物語でもあった。**とある。なるほど、そういう読み方もできるのか・・・。

著者の長尾氏によって作成された方丈庵における「臨終の行儀」としての設えの様子を示す図が載っている。(93頁) 庵の東側に北枕になるように整えられた寝床、西の壁に掛けられた阿弥陀絵像。

長尾氏は方丈庵を往生のための住まいだと指摘し、(125頁)さらに次のように続けている。**長明にとって、「死の形」の確認は、「生の原点回帰」を促したように思えます。つまり、方丈庵を建て、自らの死のイメージを具体化したことによって、かえって充実した生を送ることができたのです。**(126頁)

最終章の「おわりに」で同様の指摘を繰り返している。それは次の一文。**鴨長明は自らの終の棲家として、方丈庵を構想し、そこでの暮らしに安寧を見出しました。**(244頁) 

本書の幅広の帯に**人生の締めくくりを過ごすなら、どんな家がいいですか?**という問いかけの一文がある。著者の答えは「方丈庵のような家」なのでは。本書を読み終えて、私も鴨長明の暮らしぶりに惹かれた。注意すべきは自然とのつながりはもちろん、人とのつながりも保持しているということ。


本書で取り上げられている『地球家族』(TOTO 出版)について以前書いている(過去ログ)。



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