透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

まだまだ繰り返しの美学

2009-11-19 | B 繰り返しの美学



 安曇野市内のA保育園に出かける機会がありました。

保育園はごく一般的な平面計画の場合、各年齢の保育室を南面させて、直線的に配置しますから、保育室前面のテラスは「繰り返しの美学」が成立する基本的な要件(直線的に伸びる空間)を満たします。あとは設計者がそれを意識してデザインするかどうか、です。

この保育園のテラスは床が再生木材のデッキ、壁が板張り、屋根は膜構造です。等間隔に並んだ鋼管柱、その頂部の両腕を広げたような斜材が「繰り返しの美学」していますね。

すっきりした構造で、園庭からみると美しいウェーブを描いています。膜屋根の上の外壁は鋼板の立てハゼ張り。モスグリーンが上品で膜の白との対比がきれい(この写真にも写っています)。デザインから設計者の人柄が窺えます。衒いのない素直なデザインでした。


隙間時間読書

2009-11-18 | A 読書日記



 このところ多忙で読書をする隙間時間がなかなか無い。今月はまだ読了本が1冊も無い・・・。

過日東京した際、買い求めた『新・建築入門』ちくま新書。 西洋建築史に関するベーシックな知識は欠かせない。隈研吾氏設計の根津美術館や展覧会を観たあと、同氏の著書を買い求めた。

**(前略)二十世紀を代表する建築家ミース・ファン・デル・ローエによる、ガラス箱のような建築もまた、ガラスという透明な皮膜を通じて、外部の自然に建築を従属化させようとした試みに他ならない。** などというくだりを「そうなのかなぁ~」と思いつつ読み進む。

『脳で旅する日本のクオリア』茂木健一郎/小学館

先日、友人から借りた。パラパラと見たがなかなか面白そう。この本は書店で見たことがなかった・・・。週末、一気読みしようと思うが、そんな時間取れるかな・・・。昴さん、返却が遅くなります。m(_ _)m


町の魅力って・・・

2009-11-17 | A あれこれ
 
路上観察 郡上八幡にて

 先週末、郡上八幡を初めて訪ねた。町を構成している基本的な要素は松本と似ている。城、町なかを流れる川、古い街並み、小高い丘、山並み・・・。

松本は個々の要素は郡上八幡に決して引けを取らない。でも町の総体としての魅力はどうも劣るような気がした。

それはなぜだろう、何が違うのだろう・・・。繰り返しの美学などとは違ってこれは難しい・・・。

惹かれたのは何故?

2009-11-16 | B 繰り返しの美学



■ 穂高町(現安曇野市)で撮影しました。撮影年月は不明。用途は外観からリゾートホテル、保養所の類ではないかと思います。 

先日この写真を見て気がつきました。そうか、「繰り返しの美学」な構成に惹かれていたんだ! と。当時はそんなことは意識していなかった、というか何に惹かれるのか分析ができていなかったと思います。

回廊のコンクリートの円柱、部屋ごとに造られたバルコニーと緩やかにカーブさせた庇、屋根の煙突(?)、それらのリズミカルな繰り返し。

コンクリートとタイルを組み合わせた外壁のデザインはよくあります。「別にどうってことない、普通のデザインじゃん」という指摘も聞こえてきそうです。

どこかに行く途中でわざわざ車を停めてカメラを向けたという記憶がありますが、繰り返しの美学に惹かれたんだな、と得心しました。 


晩秋の郡上八幡をゆく

2009-11-15 | A あれこれ

 町なかを川が流れていること、町を一望できる小高い場所があること、このふたつは魅力的な町に欠かせない条件だと思う。

松本は町なかを女鳥羽川が流れ、城山からは市内を一望できる。そして、昨日(14日)訪ねた郡上八幡も町なかを吉田川と小駄良川が流れ、町の西側を北から南に貫流する長良川に注いでいる。町の北東になるだろうか、小高い山の頂上にある郡上八幡城からは町を一望できる。

松本と郡上八幡は町の基本的な構造がよく似ている。郡上市(郡上八幡)は郡上郡下7町村の合併で2004年に誕生した。人口およそ45000人の小さな市。

松本から郡上八幡までは高山を経由、東海北陸自動車道を利用しておよそ3時間(160km)、意外に近い。


1 郡上八幡駅

最初に訪ねたのは長良川鉄道の郡上八幡駅。木造の古い駅舎。繰り返しの美学なホームの木柱の連なり。







2 旧八幡町役場

木造の駅舎の後、昭和11年に建てられた庁舎へ。木造2階建て。平成10年に国の登録有形文化財に指定されている。





3 郡上八幡楽藝館 

旧医院を公開している。下の写真は内科の診察室だった部屋。





4 蔵の窓



5 米穀店 

これぞ繰り返しの美学!! 飛騨古川や高山でも見られる軒先のデザイン。



6 街並み @鍛冶屋町

紅殻格子と袖壁に注目



7 大乗寺の山門(鐘楼門)

この空間構成、秀逸! 


境内の紅葉に高揚。





8 錦秋

郡上八幡城に向かう・・・ 急な坂道の途中で



9 郡上八幡城 

昭和8年に再建された木造の城



10 郡上八幡には龍が棲んでいた!



11 神農薬師

岩に祠を掘って祀られた薬師如来




12 昼めし

魅力的な町の条件、先に挙げたふたつの条件に加えて美味い郷土料理があること。


朴葉すしと鶏汁ざるそば 美味!!



同行のふたりは飲み友達。感謝、感謝!


 


エッシャーのだまし絵のような・・・

2009-11-13 | A あれこれ


路上観察日 091107

御茶ノ水、ここはなんだかエッシャーのだまし絵のような空間だ。
山田守設計の聖橋が妙に高い位置にあるような気がする・・・。
この橋の両側にはちゃんと道路が繋がっているんだろうか・・・。
中央線の電車は聖橋の下を潜ると空中に飛び出してしまうんじゃ・・・。
地下鉄の電車は神田川に次第に沈んで行きそう・・・。
森の緑が波のように押し寄せているかのよう・・・。


1111

2009-11-11 | A あれこれ



■ 今日11月11日は介護の日、折り紙の日、公共建築の日、電池の日、下駄の日、長野県きのこの日。

10月10日は目の愛護デーでした。10を時計回りに90度回転すると眉と目になるから、というのがその理由。では11月11日は・・・、睡眠の日というのはいかが。目を閉じた様子になるので。

ということで 


 


くっついたり、離れたり、交差したり

2009-11-10 | A あれこれ
 **町はけっこう広いけど、わたしの靴の裏に蛍光塗料をぬって足跡をつけてみたら、その跡って、ものすごく単純な決まりきったコースになるんじゃないかな**

川上弘美の小説『これでよろしくて?』に、こんなくだりが出てきます。先週末、東京したとき、ふとこのことを思い出しました。

案外東京ではいつも同じようなコースを移動しているかもしれません。地図上に移動コースを描き込むと、かなり重なるような気がします。四ツ谷のホテルから東京駅前のオアゾ、毎回決まっているコースです。

私の場合、美術館めぐりをすることが多いのですが、例えばいつも銀座に買い物に出かける人、コンサートに出かける人、東京ドームに野球観戦に出かける人・・・。

目的地と移動コースは人によってかなり限定的に決まっているかも知れません。

それらを東京の地図上に描き込むと、いろんなルートがくっついたり、離れたり、交差したり、おもしろそう・・・。

週末東京 その6

2009-11-09 | A あれこれ

「いせ源」@神田須田町



三菱一号館を後に地下鉄で移動。神田の「いせ源」の建物は昭和5年の建築、この東京都選定歴史的建造物であんこう鍋を食す。美味。



あんこう鍋と少量のビールでいい気分。いせ源の近くのカフェ、CHOPIN(クラシック音楽には疎いけれど、ショパンって読めた)でかなり濃い珈琲を飲む。「神田食味新道」という淡路町と須田町のふる~いお店の紹介パンフには、「頑固な程昔の儘の濃い珈琲」とある。普段、男は黙ってブラックコーヒーな私だが、ミルクを入れた・・・。



上は「いせ源」の向かいの「竹むら」、昭和5年創業の汁粉屋さん。この辺りには他にも鳥のすきやき「ぼたん」、池波正太郎が好んだそば屋「まつや」などの老舗がある(「まつや」はタイトルが思い出せないが新潮文庫の表紙にも写真が使われている)。


■「ルイス・バラガン邸をたずねる」@ワタリウム美術館



地下鉄でワタリウム美術館へ。ルイス・バラガンというメキシコの建築家の認知度はどうなんだろう・・・。プリツカー賞を受賞、自邸がユネスコの世界遺産に登録されている建築家の作品展。

「安藤建築を色彩豊かにした」ような自邸、濃いピンク色が印象的。バラガンの作品で一番有名な自邸の再現、といってもやはり限界が・・・。そう、雰囲気の再現。


■ 東京の深層へ入り込む・・・

タイトなスケジュール、ラストは広尾。すっかり暗くなってしまった昨夕、広尾の某ビルの地階にある黒川雅之さんの事務所へ・・・。ほぼ月に1回のペースで行われているというプロダクトデザインの勉強会に参加。

若いデザイナーたちのプレゼンテーションを聞く。どの世界にも優秀な人はいるものだと改めて思った。作品もプレゼンもすばらしかった。プレゼン内容は省略。

浦島太郎は助けた亀に案内されて龍宮城へ行くことができた。同様に私が東京の深層に入り込むことができたのは、案内してくれた友人のおかげ、アリガトウ。友人への謝意を記して「週末東京」稿を終わりにする。

091106:18129歩
091107:16483歩 今回もよく歩いた。


■ 原稿の加筆や写真の追加、差し替えをするかも知れません。


週末東京 その5

2009-11-08 | A あれこれ

■ 三菱一号館@千代田区丸の内



三菱一号館の復元プロジェクトの詳細な紹介展示「一丁目倫敦と丸の内スタイル展」を観た。



ジョサイア・コンドル設計の三菱一号館は明治27年竣工。日本で最初の近代的なオフィスビルだったが昭和43年に取り壊された。それが、今回の復元プロジェクトによって甦った。その詳細な展示を観た。

写真展「一号館アルバム」 建設に関わった多くの人たちを3人の写真家が撮った。あの梅佳代さん(人の表情を撮らせたらピカ一)がその内の1人だった。どうりで、ね。

3階の展示室は天井がガラス張りで小屋組みが分かるようになっていた。洋小屋組みにもいくつか種類があるが、これは松材を使ったクイーンポストトラスという構造だそうだ。

今回の復元工事では奈良県の宮大工が造ったそうだ。きちんと確認しなかったが、地元の加工場で刻んで東京まで運んだようだ。地組みしてクレーンで吊り上げる様子がビデオで流れていた。

建設場所は昔、日比谷入江と呼ばれ、海だったところ。建設には松杭が1万本!も使われたそうだ。明治24年の濃尾地震の教訓から耐震上の工夫もされていたそうで、関東大震災でも大丈夫だった、とのこと。ならば、そのまま復元しても問題ないように思うが、現行の建築基準法をクリアするように免震構造が採用されている。

小さな金物類まで、当初の設計図や写真、解体時の保存資料から忠実に再現したそうだ。

ヨーロッパでは当り前のこととして行われている復元、保存が日本では極めて稀な出来事というのも、なんだかな~。

三菱一号館は東京駅から徒歩5分。東京駅の復元工事と東京中央郵便局の剥製保存というか、高さ200mの超高層ビルに串刺しにされる焼き鳥保存工事も進んでいた。


週末東京 その4

2009-11-08 | A あれこれ


■ 丸の内オアゾの丸善本店、その4階にあるカフェ。都会的で上品でちょっと気取った雰囲気。書店で買い求めた本をここで読む。窓外に目をやると音も無く電車が流れて行く・・・。カールおじさんも時にはこんな空間で過ごす、いいじゃないか。



『自然界の秘められたデザイン』河出書房新社。**数理的秩序に満ちた美しい世界はなぜ生まれるのか?**帯に書かれたこんなコピーをみたら買わないわけにはいかない・・・。

「数理的な秩序」、繰り返しの美学でこのことばを何回使ったことか。混沌としていて、秩序など存在しないかに見える自然。実は自然にも数理的な秩序が隠れている。それも信じられないくらい多く・・・。それはなぜ?どうして?


週末東京 その3

2009-11-08 | A あれこれ



 隈研吾展@ギャラリー間

週末東京、根津美術館からDragon Fly Cafe、そして乃木坂にあるギャラリー間へ。TOTOのショールームに併設されているギャラリーで隈研吾展を観た。

「生命体の生成に倣う」建築デザインのプロセス。そこから導き出される環境に最適な建築。

抽象的なもの、つまり数理的な、幾何学的な単純なルールに拠って構成されてきた近代建築から有機的なもの、生命体の生成のプロセスをモデルにして構成する建築へ。

会場には多数のスタディ模型が展示されていたが、スペインのグラナダに建設中だという「グラナダ・パフォーミングアーツ・センター」の計画が興味深かった。

合板で作られた大型模型は少しだけ抽象化された細胞の集合体の様相。変形した六角形を「有機的」に重ねて構成したホールの客席はいままで観たことのない空間(下の写真:会場で配布されたパンフレットより)。ボイドスラブコンクリート構造で解いたそうだ。



伊東豊雄さんの「台中メトロポリタン・オペラハウス」は胃袋をいくつも繋げたような空間、クラインの壺の集合のようで私の理解を越えてしまっているが、隈さんのグラナダの計画は、なるほど!だった。
生命体の生成プロセスをモデルにしたアルゴリズムによる建築デザイン。そこから生まれてくる形態・・・。



伊東さんの「台中」、隈さんの「グラナダ」そして礒崎さんの「フィレンツェ新駅」(『フラックス・ストラクチャー』佐々木睦朗/TOTO出版より)。

今や、建築デザインの方法論としても、到達点としてもオーガニックがキーワードとなった。
そのことを実感した建築展だった。



 


週末東京 その1

2009-11-08 | A あれこれ

■ 根津美術館

東京南青山に先月の7日、根津美術館が新装オープンした。隈研吾さん設計のこの美術館を「閉じて開く」というキーワードでざっくりと。

「閉じる」

敷地の縁に設えた柔らかな竹垣のスクリーン。その端からそっと内側に入ると「露地」がモダンにデザインされていた。

黒い那智石と整形された石の床、さらし竹の壁、木毛板の軒天井によって構成された「露地」。銀閣寺のアプローチ空間と同じく直線的でシンプルな構成。


根津美術館の「露地」

銀閣寺の「露地」

日常から非日常への導入のための空間として、やはりこのくらいの長さが必要ということだろう。この露地の先には一体どんなシーンが展開しているんだろう・・・、というワクワク感を演出する手法。

「開く」

美術館のエントランスからホールに入ると美しい露地庭と一体化した「和」空間が展開していた。

スチールの細い柱しか視界を遮るものがない。斜めの天井を内から外へと連続させ、来館者の視線を豊かな緑へ誘導している。



隈さんはオーソドックスな「和」の手法によって魅力的な空間を創出した。


獅子の棲む漆器屋さん

2009-11-05 | F 建築に棲む生き物たち


棲息地:伊原漆器専門店@松本市中央 観察日091103

 松本に獅子が棲んでいます。

この漆器屋さんは、調べてみると創業が明治40年の老舗。看板が立派で、蔵のまち 中町を歩いていてもひと際目を引きます。 

看板に描かれているのは獅子。山屋御飴所のカエルと同じく、この老舗の守り神なのかもしれません。

沖縄のシーサーは獅子、ライオンのことですが、遠くエジプトのスフィンクスに通ずるとする説もあるようです。シルクロードによって西から東へと守護神としてのライオンが伝わって来た・・・。ロマンを感じます。