透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

想い出の1冊

2011-09-19 | A 読書日記

 大学4年の夏、所属していた研究室の夏合宿で神津島へ出かけた。某女子大の学生を何人か誘った。その中に○さんがいた。「かわいい」と「きれい」、その両方で形容したくなるような人だった。

残念ながら○さんは合宿不参加となった・・・。

合宿から帰って数日後、大学近くの喫茶店で○さんと会った。ふたりだけで。

愛読書を訊ねたところ、○さんは倉田百三の『出家とその弟子』を挙げた。未読の本だった。早速買い求めて読んだ・・・。**親鸞の法語集「歎異鈔」の教えを戯曲化した宗教文学の名作**と本の裏表紙に紹介されている。



この本には○さんと初めて会った喫茶店の名前と日付が記されている。

○さんは卒業後、関西の出身地へ帰っていった・・・。 

はるか遠い日の記憶は忘却という名の海へ・・・。そしてこの本だけが今も書棚に。

そういえば、あの合宿で描いたスケッチの1枚をプレゼントしたっけ・・・。

  
数年後、再び出かけた神津島で描いたスケッチ 


 


新聞を読んで

2011-09-17 | A あれこれ



 昨日(16日)の朝刊に約7千万年前の白亜紀後期の恐竜や鳥類の羽毛が琥珀に閉じ込められているのをカナダの研究チームが発見した、という記事が掲載されていました(写真:信濃毎日新聞の紙面)。

上の写真の左上に一緒に閉じ込められた昆虫が写っています。この昆虫について、国立科学博物館の真鍋真研究主幹の**恐竜の血を吸っていれば、遺伝子解析ができる可能性もあるが、かなり難しいだろう。**というコメントが載っています。



このコメントで『ジュラシック・パーク』を思い出しました。この小説の作者マイクル・クライトンは琥珀に閉じ込められた蚊から恐竜の血液を採取し、DNAを再構築して恐竜を再生させるというアイデアを示してみせたのでした(と書いて、該当箇所をさがしましたが見つかりません。映画では蚊を閉じ込めた琥珀が出てきましたが・・・)。クライトンの小説はどれも深い科学知識を駆使して書かれており大変興味深く読むことができます。



『ジュラシック・パーク』では遺伝子工学を応用した技術によって絶滅した恐竜をよみがえらせてしまいましたが、この『プレイ』はナノテクノロジーによって自然(生命)と人工(機械)との境界領域に新たな恐竜をつくってしまうという小説です。

このふたつの作品は共に先端技術の可能性を示すとともに危険性も指摘しています。

「可能性と危険性」。福島第1原発の大事故は「危険性」をあまりにも過小に評価(それも意図的に)した結果だと思います(って、今回の記事も予期しないところに記述が及んでしまいました・・・)。



― 残念

2011-09-14 | A 火の見櫓っておもしろい



 北安曇郡池田町の消防団詰所屋上の火の見櫓が撤去されてしまいました。下は在りし日の姿です。ユニークな形だったのに残念です。替わりにホースタワーが立っています。

地域の安全を守る地域の消防団の活動、そのシンボルである火の見櫓が次第に姿を消していく・・・。これが悲しい現実です。



今のうちにできるだけ記録しておかなければ・・・などという使命感があるわけではありませんが、とにかく出来るだけ多くの火の見櫓を観察したいと思います。



小さな本屋さん

2011-09-11 | A あれこれ


ch.books


遊歴書房


Book&Cafe ひふみよ 



■ 松本から高速バスで長野へ。私用ではいつもバスを利用する。長野駅前から徒歩で今年開業した小さな本屋さん巡りをしながら長野県信濃美術館へ。

ch.books 既存の建物を改修して不思議な(不思議ななどという言葉でごまかしてはいけないが)雰囲気のファサードに仕上げている。開店前で店内の様子が分からなかったのは残念。

遊歴書房 ここも開店前。11時開店だと知る。同一の建物「カネマツ」内のブックカフェでコーヒーを飲みながら建築関係の本を読む。インテリアとしての本、なかなか良い。 

Book&Cafe ひふみよ 1階が古書店、2階がカフェ。善光寺近くの住宅街にある。分かりにくい場所だが、あらかじめネットで調べておいたので迷わず到達できた。



2階の和室でこの本を読む。道祖神のおこりに関する興味深い内容。で、買い求めた。300円!


約11,600歩


菱田春草展

2011-09-10 | A あれこれ



 今年は日本画家の菱田春草没後100年にあたるそうで、長野県信濃美術館と飯田市美術博物館(春草は飯田出身)でそれぞれ特別展が開催されている。

善光寺の東隣、城山公園内の長野県信濃美術館で今日(10日)から始まった「没後100年 菱田春草展 ―新たなる日本画への挑戦―」を観てきた。

日本の風景の特徴は朧(おぼろ)にある。多湿な気候風土が輪郭をぼんやりと曖昧にする。ならば輪郭を描かないで、かすむ風景を描くことはできないか・・・。新しい描法を果敢に試みた菱田春草の画業の軌跡。約120点の作品展示。芸術の秋のはじまりにいい作品展を観た。

印象に残った作品は「武蔵野」、「秋景」、「夕の森」。

作品に添えられている解説の明快さが実にいい。春草が36歳で夭折したことは知らなかった・・・。

会期は10月16日(日)まで。



メモ 「菱田春草没後百年記念特別展 春草晩年の探求 ―日本美術院と装飾美―」@飯田市美術博物館 10月2日(日)まで

 


交流の場

2011-09-10 | A あれこれ

 「交流の場」と「プロポーザル」の2語で検索すると数多くのサイトがヒットする。

美術館、図書館、庁舎、学校、保育園、老人ホーム・・・、建築の用途が何であれ、プロポーザル(建築の企画提案)では「交流の場」をつくるという提案が必ずなされる。「交流」とか「交流の場」という言葉が使われていない提案書はまず無いだろう。



「交流の場」はただ空間が提供されるだけでは成立しない。交流が生まれるような積極的なはたらきかけ、活動が必要だ。よく言われるようにハードだけではだめで、ソフトが重要なのだ。この意味において、松本市梓川のカフェ バロで行われている「ミニミニ講座」という企画は興味深い。

先日、私は「火の見櫓っておもしろい」と題して1時間余りプレゼンをさせていただいた。プレゼン終了後、食事をしながら、コーヒーを飲みながら、初対面の「受講生」と語らい、楽しいひと時を過ごした。「交流」ってこういうことなんだ、とその時思った。今はネット上のバーチャルな交流ツールがいくつもある。でも私はリアルな現実世界での交流の方がいい。

「交流の場 バロ」で既に何人かと知り合いになった。これからどんな人と出会い、どんな交流が生まれるだろう・・・。


 


195 なんだか寂しそう・・・

2011-09-08 | A 火の見櫓っておもしろい


195





 松本市四賀で見かけた火の見櫓です。車で近くを走っていて、家並みの間に一瞬この火の見櫓の屋根が見えました。火の見櫓センサーの感度は相変わらず良好です。

地域の人びとの暮らしを長年守ってきた火の見櫓、地域のコミュニティーのシンボルとしての火の見櫓、ランドマークとしての火の見櫓・・・、いろいろな位置づけができる火の見櫓ですが・・・。

つる状の雑草が伸びて見張り台に達しています。もう使われることの無い火の見櫓かもしれませんが、晩年の姿としては寂しいです。見張り台に取り付けられた照明が昼間から点灯しています。なんだか寂しそう・・・。


 


194 秋、寂しそうな火の見櫓

2011-09-07 | A 火の見櫓っておもしろい


194

 信州の鄙里はもうすっかり秋です。朝晩 肌寒くて長袖のシャツ一枚では無理、羽織るものが要ります。さて、今回取り上げるのは松本市中川(旧四賀村)の火の見櫓です。なんだか、火の見櫓が寂しそう見えてしまうのも秋、だからでしょうか・・・。

先週、「おひさま」で丸庵が火事で燃えてしまいましたね。予期しない出来事で、びっくりしました。確か、昭和25年のことでした。まだ空襲警報のサイレンが使われていたのでしょうか、火事のとき、サイレンがなりました。そして、半鐘の音も聞こえてきました。ドラマで半鐘の音を聞くなんて・・・、火の見櫓に関心を持ち始めたから、でもないでしょうが不思議な気持ちになりました。






この火の見櫓で注目は見張り台の手すりに付けられたこのハートです。屋根のてっぺんにも同じハートが・・・。




 


街路樹効果

2011-09-06 | B 繰り返しの美学


大名町の通りを松本城側から望む

 前稿に「街路樹効果」のことを書いた。樹は建築の百難を隠し、街路樹は街並みに統一感を与え、美しく見せる。

パリが世界一美しい街だと言われる理由のひとつに緑が多いことが挙げられる。先日偶々みたテレビ番組でパリの魅力を解説していたが、この指摘には素直に頷くことができる。

観光都市松本。今年は「おひさま効果」で例年より観光客がだいぶ多いと聞く。通りには「おひさま」の黄色い小旗が掲げられていて、街路樹と共に繰り返しの美学な演出がされている。

松本駅から松本城まで、このような街路樹の通りが続いていたらなぁ・・・。



街並みを秩序づけるもの

2011-09-06 | B 繰り返しの美学



 建築家・槇文彦設計のヒルサイド・テラス第一期から現在に至る一連の建築群によって代官山は秩序づけられた美しい街並みを形成している。代官山における知的で上品な雰囲気の創出は、混沌とした東京にあって、奇跡的な出来事と言っていいだろう。

ヨーロッパの都市では街並みを秩序づけるためのルールが決められている。建物の高さや外壁の色、窓の形や大きさなどのデザインを統一する細かなルール。アジアの街並みの特徴は「混沌」、東京もその例外ではない。それを海外の建築家が「刺激的だ」などと評することもあるが、決して美しくはない。

混沌とした街並みを秩序づけて美しくする代表的な「装置」は街路樹だ。全国にいくつもの事例があるが、東京の表参道もその一例。あのケヤキ並木が無ければ魅力は半減するだろう。仙台の定禅寺通り然り。松本の女鳥羽川に架かる千歳橋から松本城に至る大名町が、この季節落ち着いていて美しいのは大きく育った街路樹のシナノキが街並みに与える秩序感による。街路樹効果。シナノキが落葉する冬季には美しさが半減してしまうことから、このことが理解されるだろう。



女鳥羽川沿いの歩道にベージュ色のパラソルがいくつか並んでいる。このパラソルも街並みに秩序とリズムを与える装置として効果的だと思う。先日このパラソルのことが新聞で紹介された。地元の商店街が**町中に連続性を持たせたりすることで、誘客につながればと、5本設置した。**そうだ。「連続性」というのは統一感とか秩序感といった言葉と同じ意味で使われている。

パラソルをいくつも並べることで得られる街並みの秩序感とその心地よさ、美しさ。地元商店街の人たちはちゃんと「繰り返しの美学」を分かっている!


過去ログ


ふたつの建築展

2011-09-05 | A あれこれ

 TOTOギャラリー・間で開催されている「アラヴェナ展」が今朝(4日)のテレビ番組「日曜美術館」で紹介された。南米チリの建築家アレハンドロ・アラヴェナの建築展だ。世界的に有名な建築家だそうだが、名前すら知らなかった。トホホ。同展覧会をネットで調べてみる。なかなか興味深い建築作品を創っている。展覧会の会期は10月1日まで。

森美術館では「メタボリズムの未来都市展」が今月17日から始まる。建築や都市も生命体と同様に新陳代謝すべきという理論と実践、1960年代の「メタボリズム」。約80のプロジェクトを500点以上の資料で紹介するという展覧会。会期は来年の1月15日まで。

このふたつの展覧会を観るためには今月中に出かけなくてはならない。今月は週末いろいろ予定がある。スケジュールが調整できるかなぁ。

昨年の9月以来、1年間も東京していない・・・。


 


193 火の見櫓鑑賞マニュアル

2011-09-02 | A 火の見櫓っておもしろい


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 明日(3日)のミニミニ講座@カフェ バロにどんな方が参加してくださるのか、楽しみです。プレゼン用のパワーポイントの準備をなんとか済ませることができて、ホッとしています。

火の見櫓チェックポイント

火の見櫓鑑賞のツボ

ここに過去ログを紹介しておきます。


さて、今回は安曇野市穂高に隣接する北安曇郡松川村の火の見櫓です。先日所用で近くまで出かけた際、観察しました。この火の見櫓は生活道路の辻に立っていますが、このような立地は多いです。三角形の空きスペースに三角形の櫓。

1:櫓全体の印象  櫓の上方への絞り込みのフォルムはなかなかきれいです。櫓の絞り込みに対応して横架材の間隔が次第に狭くなっていますが、それも好ましいと思います。すっきりした櫓、という印象です。

2:屋根と見張り台  見張り台の手すりに鳥がとまっています。カラスではないかと思います。でも鳴き声を聞いていませんし、鳥には疎いのではっきりしませんが・・・。どうやら、見張り台に巣をつくったようで、床に木の枝がたくさんあります。写真で床がゴチャゴチャしているのが分かりますね。

屋根にも見張り台にも飾りは何もありません、機能に徹したシンプルなデザインです。屋根の外に照明器具が突出していないのも好ましいです。半鐘も付いています。もっとも、鳥が巣をつくってしまうくらいですから、使われてはいないのでしょうが。

3:脚部  シンプルにアーチ材を付けていますが、下半分以上がアングル単材になっています。脚に厳しい私としては、下端まで(基礎のところまで)アーチで構成して欲しかったと思います。このようなパターンが多いのですが・・・。

1 櫓のプロポーション ★★★★★
2 屋根・見張り台の美しさ ★★★★★
3 脚の美しさ 
★★

少し甘い評価です。