映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「シェフ!」 ジャン・レノ&ミカエル・ユーン

2013-08-28 17:54:14 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
映画「シェフ!」は2012年に公開したコメディタッチのフランス映画だ。

dvdジャケットにシェフ姿のジャン・レノミカエル・ユーンが写っている。映画ポスターを見た後時も気になったが、DVDにスルーした。何気なく手にとったが、映画を見てみるとムードがほのぼのして悪くない。映画として傑作というわけではないが、見ているうちに気持ちが安らいでいく映画である。美しい料理を目で楽しむのにもいい。

若き料理人ジャッキー・ボノ(ミカエル・ユーン)は、料理へのこだわりが強すぎて、お店や顧客とトラブルばかり起こしていた。レストランを次々とクビにされる。彼は有名シェフのレシピを数多く記憶するオタク的料理人であった。彼の婚約者ベアトリス(ラファエル・アゴゲ)は妊娠していた。彼女のために稼ぎがないと困るので、老人ホームのペンキ塗りをはじめる。それでも料理のことしか頭にない彼は、ホームの厨房に口を出し始める。

パリの超高級三ツ星フレンチレストラン「カルゴ・ラガルド」は、ベテランシェフであるアレクサンドル・ラガルド(ジャン・レノ)がいることで有名だ。テレビの人気料理番組でも腕をふるう彼は超メジャーだった。しかし、最近マンネリに陥り評判を落としていた。レストランとの契約では、店の「三ツ星」を守ることがシェフ契約の大前提だった。 レストランオーナーからはメニューが時代遅れだと批判され、有能な助手たちも他店に移っていた。そして、オーナーから契約書通りに店の星が減ればクビだと通告されていた。

スランプ気味のアレクサンドルは前オーナーに会いに老人ホームを訪れた。そこで一緒に一皿のスープを飲むと、アレクサンドルが以前つくったスープのレシピを再現したものと気づく。それはアレクサンドルのレシピを完璧に暗記したジャッキーの手によるものだった。ペンキを塗っていたジャッキーは、料理の腕を見込まれスカウトされ、無給で彼の助手として働くことになる。
しかし、身重の婚約者ベアトリスには無給となる転職の話は言えなかった。

「三ツ星」の調査員は覆面で突如あらわれる。店に来るまでわからない。当日ギャルソンが感づいてわかる。ある調査員が来た時、ジャッキーはアレクサンドルのレシピを勝手にアレンジしてしまう。味付けを少し変えたのだ。それを聞いてアレクサンドルは憤慨するが、結果的にはその方が調査員には受ける。しかし、本審査する調査員はこれからやってくる。しかも審査員の好みは「分子料理」だという。今のままではまずいと、メニュー作りのため2人は他店への偵察を始める。ジャッキーが声を掛けた老人ホームのシェフたちもチームに加わり、新しいメニューの開発に取り掛かり始める。

そんな中、ジャッキーが再び厨房で働いていることを知ったベアトリスが、彼のウソに激怒し実家に帰る。とりなしてもうまくいかない。相棒のピンチに上司のアレクサンドルが仲裁にのりだすが。。

貧乏料理人ジャッキーは、自分の流儀に合わないと気が済まない職人肌だ。
顧客がオーダーした食事に合わせるワインが違うと、厨房から座席までやってきて違うワインを勧める。今飲んでいるワインを変えないなら、別の料理を持ってくると言い張る。当然クビだ。彼がつくるレシピでは食材にコストがかかってしまって店の利益率が落ちる。その店もクビだ。そんなことを続けてもまったく懲りない。
そんなジャッキーなのに奥さんが超べっぴんなのは何か不自然な気もするが、それは仕方ないだろう。

本屋で万引きしたアレクサンドルのレシピ本を細やかにジャッキーはマル暗記している。当然暗記するだけでなく、自分で料理を作っているのであろう。離婚経験者のアレクサンドルをつかまえて、離婚前の方がおいしいものを作っていたなんて平気でいう。このキャラクターも凄い。

融通が利かない男なのに、食材がまったくないという最後の修羅場では機転を利かす。ある意味スーパーマンだ。
有名シェフのレシピを完全にマスターことだけでも、かなりの実力がつくんだなあということを感じさせる。現実にはそんな簡単なものではないだろうとは思うが、本当に映画のように身につけているなら、それなりの料理人になれるかもしれない。
その昔、有名な料理家の辻静雄さんが「料理学校で1年に1500種類の料理を教えるが、そのうちの1%つまり15品を自分のものにできれば、一生食っていける。」と語るのを読んだことがある。この言葉って印象的だった。
料理だけでなくどんな仕事だって同じようなことが言えるだろう。何か一つを極めるということって大切なんだなって。



映画に出てくるフレンチはどれもこれもおいしそう。
勉強不足のせいか「分子料理」って知らなかった。なんか化学の実験風景みたいなところで、料理しているような感じだ。おいしいんだろうなあ?調べて一度賞味したい。
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映画「初恋」 宮崎あおい

2013-08-28 06:51:19 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「初恋」は2006年の三億円事件犯人がテーマになる映画作品だ。
犯人をなんと宮崎あおいが演じる。

1968年の三億円強奪事件は未解決事件として、長らくマスコミの話題になった。いろんな推理がされたが、結局は時効を迎える。真犯人に関する説は数多くあったが、この映画化はそれらとは全く違う犯人像である。60年代後半の学園紛争時代の世相を巧みに描きながら事件と結び付ける。
宮崎あおいの好演に魅かれる。

1966年の東京を映す。
高校生のみすず(宮崎あおい)は、親と別れ親族に預けられていた。学校の同級生とはなじめない。家に帰っても引き取られた叔母家族ともなじんでいない。みすずの母親は幼い頃、兄を連れていなくなったきりだった。
ある日、みすずは新宿の繁華街にあるジャズ喫茶Bに足を踏み入れた。数日前、母が家を出てから会うことのなかった兄が突然現われ、手渡したマッチがこの店のものだったのだ。暗闇にジャズが店中に響き渡り、音楽に酔いしれる客がいる。フロアの奥に常連の兄の仲間がいた。そこには、女にもてて人望も厚い兄の亮(宮崎将)、亮を慕うアングラ劇団の看板女優ユカ、作家志望で積極的にデモに参加している浪人生のタケシ、ケンカっぱやい肉体派のテツ、お調子者でムードメイカーのヤス。そして、他とは違う雰囲気でひとりランボーの詩集を読む東大生の岸(小出恵介)がいた。みすずは彼らの仲間に加わり、少しずつ生活が変化してゆく。Bで過ごす時間が多くなり、いつの間にかみすずにとって、Bはかけがえのない場所になりつつあった。
ある日、岸はみすずに驚くべき計画を持ちかける。現金輸送車の強奪計画だった。みすずは驚いたが、岸の役に立ちたい一心で、この壮大な計画にのめりこむが。。。


当時の新宿のジャズ喫茶の風景が懐かしい。今ではずいぶんと減った。
自分が中学に上がったのは70年代前半だ。最初ビートルズから入って、当時ニューロックと呼ばれた世界にはまった。ヒットチャートマニアでもあった。ニューロックの中にはシカゴやブラッドスウェット&ティアーズがあり、その延長でジャズを聴くようになった。最初は何が何だかわからなかったが、次第にはまっていった。中学3年になり、高校受験の講習会で渋谷に行くようになったころ、おそるおそる1人で新宿のジャズ喫茶を覗くようになっていた。この映画では描かれているような若者たちが大勢いた。
自分は学園紛争時代の少し後の世代である。他大学に行くと、プラカードの前で演説する闘士たちを見たものだが、母校にはそういう奴らをバカにするムードがあった。実際にまわりにもいなかった。ああいう人間のクズたちと別の世界にいれてよかったと思う。ここではそういう60年代後半の若者をクローズアップする。この映画でジャズ喫茶でたむろった仲間たちが、新宿の騒乱で機動隊にボコボコに殴られる場面を見てバカな奴らだなあと笑ってしまった。
そういう場に高校生ながら「自分の居場所」を見つけた一人の少女の物語だ。

三億円事件が起きたのは年末だった。子供心ながら当時は大騒ぎだったと記憶している。自分が通う小学校でも話題が集中していた。でもこの時、自分の家では家長である祖父のがんが発覚したところであった。それどころではなかった。結局祖父は翌年4月に亡くなる。そのため、この事件に関心を強くもつようになるのは、高校生になって事件の時効がマスコミの話題になってからかもしれない。


沢田研二が三億円事件の犯人を演じたテレビドラマ「悪魔のようなあいつ」は名曲「時の過ぎゆくままに」が劇中で流れていたので有名だ。ジュリーが一番妖艶なころだ。荒井(松任谷)由美の歌でのちに石川ひとみが歌って大ヒットした「まちぶせ」を最初に歌ったのはこの番組で主役に絡む少女を演じた三木聖子だ。瀟洒な彼女の印象が強い。そんな訳でこの番組をやる日は勉強がまったく手につかなかった。
そして三億円犯人に関する情報を収集した。今のようにネットがあるわけでない。本屋や図書館で情報を得た。一人の少年が直後に自殺していて、それが一番有力そうに見えるが、この事件一人で完結するには難しいものがある。この映画のようにコンビで組んでやらないと出来そうもない気がする。

宮崎あおいがいい。新宿のタバコの煙がムンムンとするジャズ喫茶に一人おそるおそる入っていく姿や、初めてバイクを運転する場面の初々しさが実にかわいい。白バイに乗って黒のセドリックに向かう場面はドキドキしてしまう。年上の男性に憧れる少女の恋心を身体全体でうまく表現していた。

予想よりはおもしろく見れた。
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