映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「グランドフィナーレ」パオロ・ソレンティーノ&マイケル・ケイン

2016-05-02 18:34:54 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「グランドフィナーレ」を映画館で見てきました。


「グレート・ビューティー/追憶のローマ」のパオロ・ソレンティーノ脚本・監督作である。原題は「YOUTH」である。この映画を一通り見た人からすると、この原題のほうがだれもがしっくりくるだろう。「若さ」というような題名は映画の売り込みを考えるとつけられないものね。「グランドフィナーレ」で雰囲気ある指揮者がタクトを持っているようなポスターのほうが音楽映画のようで見に行く人は多い気がする。でもこの映画はパオロ・ソレンティーノ監督がむしろコミカルに作っている感じで、最後のコンサート部部分も歌手の分厚い真っ赤な口紅ををみると失礼だけどおかしくなってしまう。

世界的にその名を知られる、英国人音楽家フレッド(マイケル・ケイン)。今では作曲も指揮も引退し、ハリウッドスターやセレブが宿泊するアルプスの高級ホテルで優雅なバカンスを送っている。


長年の親友で映画監督のミック(ハーヴェイ・カイテル)も一緒だ。現役にこだわり続ける彼は、若いスタッフたちと新作の構想に没頭中である。そんな中、英国エリザベス女王の特使からフィリップ殿下の生誕コンサートで、フレッドが作曲した「シンプル・ソング」の指揮を依頼されるが、なぜか頑なに断るフレッド。その理由は、娘のレナ(レイチェル・ワイズ)にも隠している、妻とのある秘密にあった。そんなとき映画監督のミックのもとへ、彼が没頭していた新作に出演依頼をしていた女優(ジェーンフォンダ)が訪ねてくるのであるが。。。




1.ホテル滞在の顔ぶれ
前作ではローマの上流階級の雰囲気が醸し出されていたけど、今回はスイスの高級リゾートホテルが舞台で違った意味で面白い登場人物を数多く出演させている。
マラドーナを連想させるデブの元サッカー選手、でもこれはちょっと太りすぎじゃない。すげえ太鼓腹男がサインをねだられるシーンがある。プールで左利き論をポールダノが話しているときに、俺も左利きだとデブがのたまう。これに対して「あなたの左利きは世界中が知っている」とダノ演じる俳優がいうと、プライドを満されたデブはにっこり。


ジョニーデップを連想させるような俳優でロボット映画で一財産を作ったという映画関係者をポールダノが演じる。いつもホテルの一角で優雅に寝そべっている。突如髪を切って、ちょび髭をはやしてヒトラーそっくりになる。あれこれって誰?と思ってしまうくらいの変身。ホテルの滞在者もビックリだ。


ミスユニバースも滞在している。ゴージャスな雰囲気をホテル内にまき散らしているが、主人公が年寄り2人で温水プールにいるときに、突如彼女が真っ裸でボリュームたっぷりのヌード姿で出現、一緒にプールに入る。これまた凄いボリューム、混浴温泉のようだ。このスーパーボディを見て、主人公は一言「神だ。」たしかにそうだ。


などなどおもしろいパフォーマンスがたっぷりだ。
なかでもマッサージをする少女のパフォーマンスが奇想天外で、独特の舞を踊る。マッサージを通じての主人公との会話もなかなか趣がある。

2.ジェーンフォンダ
名優ヘンリーフォンダの一族は、子供たちが俳優になったわけだけど、艶福家の父親に反発して父娘の仲は良くなかったといわれている。それでもキャサリン・ヘップバーンがヘンリーの妻を演じ、父娘共演した「黄昏」は枯れきったヘンリーフォンダに雰囲気があり、後味の良さは抜群である。そこでのジェーンの出番は比較的少ないので、助演女優賞は受賞していないが、「コールガール」と「帰郷」という二作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞している。そういうジェーンフォンダが往年の名優という役柄で登場している。


ハーヴェイ・カイテル演じる監督に引き立てられ大スターになったという設定で、その昔役を得るためにはプロデューサーと平気で寝る女なのに監督が育てたという昔話がでる。監督としてはジェーン演じる女優に対して思いが強い。それなのに今回監督が熱心に準備している映画への出演を断るのだ。映画の一つのヤマになる。ジェーンはそのやり取りのみに出てくるわけである。78歳になって、厚化粧もきつい。ベティデイビスジョーンクロフォードがババアになってから出た映画と同じようなホラー系の顔にも見えてくる。それなのに存在感は抜群だ。配役は正解だと思う。

このあとのハーヴェイ・カイテルの白昼夢のような場面は、昔から監督が世話をしていた女優が多数出てくる。それぞれの時代のファッションでだ。幻想的というわけではないが、こういうシーンは好きだ。

3.パオロ・ソレンティーノ監督
ショーンペンにその才能を認められ、ショーンが主演する「きっとここが帰る場所」の監督となった。この映画は傑作である。常にケバイ化粧をしている元人気ロックスターをショーンペンが演じたわけだが、ロードムービーという設定でいろんなけったいな人物を登場させる。そこでのパフォーマンスが見ていて楽しい。しかも、ショーンペンらしいヴィジュアル的にも素晴らしい映像コンテである。2012年でいうと文句なく自分の1位に推せる作品だ。
続いての「グレートビューティ」はローマを舞台にしたこれも素晴らしい映画だったんだけど、頭でまとめきれずに感想が書ききれなかった。思わずアントニオーニの「夜」を連想した。ローマのハイソサエティの社交が描かれて素敵だった。


こんなすごい作品を生む監督なので「グランドフィナーレ」は見逃せないと思っていた。ホテルが舞台なので「グランドホテル」形式かと思ったが、そうでもないかな。いろんな登場人物にコミカルなパフォーマンスを演じさせるところに「きっとここが帰る場所」を連想させるものがあった。

(参考作品)

きっと ここが帰る場所
パオロ・ソレンティーノ監督とショーンペンのコンビ作
コメント
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