映画とライフデザイン

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映画「大地の子守歌」原田美枝子&増村保造

2020-10-14 16:46:52 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「大地の子守歌」を名画座で見てきました。


「大地の子守歌」は昭和51年(1976年)の作品で自分と同世代の原田美枝子主演、この映画も長い間DVD化されていなくて見るチャンスがなかった。名画座で増村保造特集を上演しているに気づき、足を向けた。これは見てよかった。13歳の少女が瀬戸内海に浮かぶ島の遊郭に売られ悪戦苦闘するという話だ。ここでは増村保造のハードな演出とこの当時まだ若干17歳だった原田美枝子の体当たり演技が光る。

昭和7年、四国の山奥で13歳のおりん(原田美枝子)は、ババアと呼ぶ祖母(賀原夏子)と暮らしていた。男勝りのおりんは小学校もいかず、獣を狩って食べる野生人のような生活をしていたが、ある日家に戻るとババアが息絶えていたのに気づく。そのことは周りに黙っていたが、村の人たちにばれてしまう。一人になったおりんを狙って、女衒の男がおりんに接近する。山で育って海を見ていないおりんに、言葉巧みに海を見に行こうと誘い、瀬戸内海に浮かぶ御手洗島に連れて行くのだ。

島にいくと富田屋という遊郭に連れていかれる。おりんは抵抗したが、そのまま下働きをすることになる。男勝りのおりんは周囲と常に軋轢を起こしていた。陸地の売春とは別に「おちょろ舟」という舟を出して沖で停泊する船での売春があった。おりんは進んで漕ぎ手になり店を手伝った。

やがて、初潮を迎えても店に黙っていたが、富田屋の店主たちにばれてしまい客をとるようになる。おりんはこの生活から逃れようと人の倍働いた。海辺で同世代の青年(佐藤佑介)と知り合ったりして気を紛らしていた。ところが、ある日目の前が見えずらくなっていることに気づく。人一倍働いていたせいか医者に行くと片目はほぼ失明状態だといわれるのであるが。。。

1.野生の女おりんとセックスチェック第二の性との共通点

山奥の藁ぶき屋根の一軒家がおりんとババアの住処だ。野ウサギを狩ったりして小学校もいかず生活する。野生そのものだ。言葉づかいも普通の男以上に荒々しい。そんなおりんが瀬戸内海の島で売春宿に気が付くと行かされている。他の女郎とはすぐさま取っ組み合いのけんかを始めるし、手が付けられない。気に食わない客から「水くれ」といわれたのでバケツに水を入れてきて、客に浴びせるとかめちゃくちゃだ。


そんな野性的なおりんを演じる原田美枝子もすごい。悪さをしたときに、全裸で店主からお仕置きを受ける残忍なシーンがある。SM映画のようだ。17歳にしてヌード全開である。この原田美枝子をみて連想したのが、同じ増村保造監督作品の「セックスチェック第二の性」だ。男女の性別があいまいな陸上選手を演じる安田道代が強烈な目つきで相手をにらむ。ものすごいワイルドだ。周囲と強烈な軋轢を起こす場面が全く同じにみえる。

これって、増村保造監督特有の個性的人物の異端ぶりを強調する演技指導が生んだものだと思う。若き原田美枝子もよく食らいついていったと思う。

2.瀬戸内海に浮かぶ島に売られる
御手洗島というのは初めて聞く名前だ。てっきり売春島だと思ったらそうではなさそうだ。江戸時代から瀬戸内海の海上輸送の中継地点だったらしい。考えてみたら、客がいなければ売春は成立しないわけで、それなりに栄えたところだったのであろう。今も伝統的な風景が一部残っているようだ。

売春宿に売られたというのが、ババアが死んで身内がいなくなったおりんなのに、女衒が誰に金を支払ったのか?ちょっとよくわからないが、単に女衒が儲けただけなのかもしれない。「おちょろ舟」という舟で沖の船でやる売春というのもすごい話だ。こんなの初めて聞いた。輸送する船も多く、きっと地理的に停泊している船がそれなりにあるあろう。舟を沖の海まで漕いでいくというのも女性には酷な仕事なんだろうが、それを進んで買って出るおりんという女もすごい。

コメント
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