映画「ケナは韓国が嫌い」を映画館で観てきました。
映画「ケナは韓国が嫌いで」は日本の右翼系嫌韓者の人が喜びそうな題名だが、20代の普通の女の子の視点で描く小説「韓国が嫌いで」の映画化である。監督・脚本はチャン・ゴンジェ。韓国映画は社会問題を巧みに取り上げることが多い。ストーリーのアップダウンが激しいのは魅力で好きな作品も多い。でも直近は、「満ち足りた家族」のような傑作はあっても以前よりはハズレ映画が多くなった。その一方でごく普通の韓国女子の気持ちに焦点をあてる映画だと感じて、同世代の娘がいる自分は観たい気になる。
ソウル郊外団地で両親と妹と共に暮らす28歳のケナ(コ・アソン)は大学を卒業後、正社員として働く3年目の会社員だった。毎日片道2時間かけてソウル市内の会社に通勤している。上司とはそりが合わない。大学時代から交際して7年になる恋人のジミョン(キム・ウギョム)は、ピントのずれた話をしがちでケナはいらだつ。ケナは恋人の家族とつきあうにも居心地の悪さを感じていた。
ケナが家族と暮らす団地は老朽化が進む再開発地区にあり、数年すれば新しいマンションに移れる。求愛する恋人の実家とはそりが合わない。家族が結婚を急かすのは困る。ケナは韓国を抜けだしてニュージーランド移住を決意する。
久々韓国のどぎつくない映画を観た。
韓国映画は極端な格差問題を扱うが、それほどでもない。極悪な奴らや黒社会は一切出てこない。7年付き合っている彼氏はやさしい。主人公ケナはクイっと酒を飲んで大酒飲みで喫煙者。よくいる韓国の若い女の子だ。彼氏の実家の方がいい家でという話はあっても格差を問うような話ではない。若者の自殺率が先進国1位など主人公が韓国を嫌がる面は多々言葉にでてくる。それでも現状に不満足なのは自分にはぜいたくに見える。それでも思い切って海外に渡航してしまうのだ。
ただ、時間軸を数年単位で前後に飛ばしていくので映画としてはわかりづらい。突然変わるのでそのシーンがいつのことなのか見えづらい。技巧にはしりすぎと感じる。それでも主演のコ・アソンは若者らしいチャレンジャースピリットがあって好感がもてる。
⒈上司からの叱責と反発のシーン
取引業者のランクを評価する会社の審査基準ががあって、その通りにケナが処理しているのに上司から文句を言われる。あの会社は取引があるんだからうまくやってよと。まじめな女性社員が会社のルール通りに物事を進めるのは日本も韓国も同じだろう。女子社員はルールを逸脱しない。ある意味融通が利かないのはよくありがちなことだけど、言われる方も困るよね。
ケナは反発して会社を辞めますと言いだす。すると、上司は辞められると困ると大慌てで次回異動させるから待ってと言う。部下を辞めさせると上司の評価が下がるようなのだ。日本も基本的には同じだけど、最近の日本は若手の転職が異様に多くなってきたのでサジ加減が変わったかも。
⒉ニュージーランドでの格付け
ニュージーランドに行ったら、掛け持ちでいくつものバイトをして生計の補助にする。そこでおもしろい話題が出た。ニュージーランドの韓国人はランク付けが好きでこんな感じで自分を格付けしているらしい。
米国>日本、韓国>中国>東南アジア
韓国人留学生はいくつもバイトしていて元々一般家庭の出身だという。まさにケナのことだ。本当に金持ちな韓国人だったら米国に行く。ニュージーランドで金持ちの出身なのは東南アジアの留学生なんだよというセリフがあった。なるほどわかる。先に観た中国映画でもオセアニアの話題が多かった。米国の物価も上がりすぎて避けられているんだろう。
⒊開発って賃貸もあり?
もともとソウル郊外の古い団地に住んでいた。ソウルの会社までバスと電車乗り継いで2時間だ。開発エリアに入っていて建て替えるらしい。賃料が話題なので賃貸なんだね。次に住むのは18坪か24坪かなんていうセリフがあって建て替えても住めるみたい。へえそうなんだ。日本だとむずかしいのでは?
⒋ニュージーランド脱出
ニュージーランドでの現地人や同じ留学生との出会いを描く。色んな出会いがあって成長していく姿を見るのは悪くない。ケナと同じFラン大学出のチャラい韓国出身者と付き合ったり、インドネシアの男に誘われて一緒に住もうとと口説かれる。ファッション系のお店に勤めていて、他の女性店員に「あんたの靴はこの店に似合わない」と言われても、代わりに抗弁してかばってくれる同僚もいる。人生勉強をしていくのだ。
そんな変化を見るのもいいんじゃないかな。大学の時から付き合って渡航時にふった出版社にようやく勤めた元彼氏と帰国時に再会する。一緒になろうと口説かれ体を合わせても本質的になびかない。ニュージーランドに戻っていくのだ。日本の若者にも通じる話が多く、嫌韓の日本人が喜びそうな映画ではなかった。加えてケナの破天荒な妹役がよく見えた。