「菊と刀」を読んで衝撃を受けない日本人がいるだろうか?ベネデクト女史は日本を訪問したことが無い。在米の日本人、戦争捕虜と会話を交わし日本人の本質を客観的に淡々と描いている。日本文化の善悪を論じない。自分の好き嫌いを表明しない。事実のみを明快にそして体系的に、どの国の人が読んでも分かるように書いてある。戦後マッカーサーの占領政策へ大きな影響を与えたと言われる本である。
ベネデクト女史が外国の文化や考えかたの善悪を論じないのは何故か?違う地域の文化を比較するのは意味があるが善悪を論ずるのは馬鹿馬鹿しいことだ。と教えているような気がする。太平洋戦争に負けた日本人がアメリカ文化を崇拝していた当時ではこの意味がよく理解出来ない。アメリカのすることはすべて素晴らしい。そんな風潮が戦後、20年位横行していた。しかしアメリカへ留学し住んでみるとアメリカには良いことも悪いことも混在しているという実感を持つ。そうか、それでベネデクト女史は日本人の善悪を論じなかったのか。やっと理解出来た。体験しないと分からないのは人間の一般で恥ずかしいことではない。
そこから「どんな国の文化にも必ず良いとこ悪いとこが混在している」という確信が生まれる。
いきなり話は飛ぶが最近テレビ番組に「ケンミンショー」というものがあり全国の種々な県のおかしな生活習慣を紹介する番組があり笑いが止まらない。この取材態度と編集方針が「菊と刀」のように善悪を押し付けていない。実に良質な笑いである。(この項は続く)