何か仕事をしようとすると、全て人間関係がうまく行かない。自分だけの空間が欲しい。山林に小屋を作り、その後1988年に水の上にも隠れ家を作ろうと考えた。キャビン付きのクルーザーヨットを男の隠れ家にしている雑誌記事を見てすぐに真似をした。クルーザーの新艇は1000万円以上するが中古は車の中古位とも書いてある。琵琶湖周辺は中古艇が格安という。ヤマハ19を買い陸送し霞が浦に運ぶ。船の長さは19フィート。キャビンは狭いが2人なら寝れる。街の明かりがチラチラ波間に揺れる夜のキャビンは淋しくて、男の隠れ家に好適である。何度も泊まった。10年間ヤマハ19に通ったが、隠れ家としては狭すぎる。炊事用のコンロが無い。トイレが付いていない。電灯がつかない。冬の夜はめっぽう寒い。厚いフトンを持ち込むので一層狭くなる。
1998年に進水後17年のアメリカのクルーザーへ買い換える。長さは26フィートながらキャビンの天井は高く幅広い。32フィートの艇のキャビンくらい大きい。炊事用のコンロが2口と流しが付いている。電動水洗トイレ、夜間航行用のライト、室内灯が完備している。
闇夜に霞が浦へ出てゆくと遥か岸辺には家々の灯火がまたたき黒い水面が夜風に揺れている。独りで出るので暗い湖が何か恐ろしく感ずる。岸の灯火が見えていても怖い。はるか海上遠く沖にでている船の操舵室の孤独な仕事が想像される。
山林の小屋とクルーザーへ隠れ家をもとめて通うことは滑稽かもしれない。しかし山林の小屋もクルーザーも同じような目的で使う。名前は「あけび荘」と「あけび号」となっている。(この項の終わり)