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後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

冬のセイリングをして来ました。

2007年11月28日 | スポーツ

霞ヶ浦は曇り。九十九里浜のほうからの東北の寒風が吹きつのり時折筑波颪の突風がある。

メインセールを上げるのは危険すぎる。前帆のジブセールをフルに展開し走る。身を切るような寒い強風。ヨットは風下側へ傾きながら疾走する。時折突風がくると船体をブルッと震わせで急に加速する。一面の曇天の下を低い雲が流れる。舳先から胴に砕ける波音がザワザワと響く。とにかくこの音を聞くとヨット乗りは皆が浮き立つという。寒い湖上で小生も船を出してよかった。この音が聞ければ寒風なんて春風と同じになる。気持ちに余裕が出て遠方を見渡すと筑波の雄岳、雌岳が綺麗な裾を引きながら重なりあっている。

しかし2時間ほど我慢して走っていたら寒さで胴体が震え出した。寒くて体が震えるなんて何年ぶりがろう?文字通り年寄りの冷水になる前に港へ帰る。

昔見たスウェーデンの厳寒のヨットの係留地を思い出す。ヨットの周りの海水が凍り、雪が積もっている。よく見ると独りの老人が白い息を吐きながら甲板の雪を下ろしている。船体も甲板もマストも全て木造である。あまりの美しさにジッと見とれていた。老人が振り返りニヤーと笑う。「木造艇の美しさが分かる奴だな」という表情である。

海水も凍る彼の地に比べれば冬も凍らない霞ヶ浦などまだまだ手ぬるい感じがする。

キャビンを締め切って炊事用のコンロを2口燃やしたら生き返った心地がした。

寒風に吹かれながら冬のセイリングをするとよくバカなことをすると笑われる。しかし説明は出来ないが兎に角爽快になる。心の汚れも洗われる。疲れも吹き飛んでしまう。

70歳以上の老人になったが毎年、12月や1月に今日のように短時間ながら冬のセイリングを楽しむ。そう言えばこのヨットも進水後25年の老艇である。美艇なせいかまだまだ若そうに見えるが。小生も頑張るつもりになる。ヨットの趣味には年齢制限がないのが良い。

(無駄話の終わり)


外国体験のいろいろ(15)

2007年11月28日 | 旅行記

    @霞ヶ浦の魚の食文化―佃煮の郷愁

霞ヶ浦の周りにはハス田が広がり、夏には大輪の白い花が風に揺れる。ハスの葉の波に浮かぶ向こうに鰻(ウナギ)屋の看板が見える。天然仕立てのウナギは茨城風の濃い味で香ばしく仕上げてある。季節によっては川エビのてんぷら、芝エビのかま揚げ、透明な生の白魚の刺身、ドジョウの柳川鍋などが供せられる。

クルーザーで沖宿の港へ行き、の中を歩くと、湖の魚の佃煮を売っている古い店がある。ワカサギ、小ブナ、ハゼのような小魚、小エビなどの佃煮が種類別に、少しずつ味付けを違えて、昔風のガラスケースに並べてある。分別しない小魚、小エビ類を一緒に佃煮にしたものもある。

以前は、沖宿まで行かないと霞ヶ浦の佃煮が手に入らないものと思い込んでいた。ところが、土浦駅近くの通りに何軒も佃煮専門の店があることが分かった。

思えば、昔、肉や卵が貴重で入手できず、佃煮でご飯を何杯も食べていたものであった。その時代、佃煮の詰め合わせが贈答用としてもてはやされていたことを思い出す。最近、佃煮を買うたびにセピア色の写真を見るような郷愁を覚える。佃煮を買っては食べ残し、また買うのは郷愁を買っているのだ。

ところが新しい魚の食文化が浸透している。土浦新鮮市場の出現である。那珂湊漁港直送の珍しい魚、魚…。アンコウ、ドンコ、オコゼ、ホウボウ、カナガシラ、馬面ハギ、小さな石ダイ、メバルなどの地魚が一面に並んでいる。生きた上海ガニまで格安で売っている。

  @ライン河のウナギと大西洋のニシン

ドイツに住んでいた1969から1970年、魚をよく食べた。ニシンやマスは小麦粉をまぶしてムニエルにする。うろこがほとんどないドイツのコイは溶いた小麦粉をつけて煮え立つ油でカラリと揚げる。タラの切り身はムニエルやポアレ。ノルウエー産サケの切り身は高級な塩引きになる。ニシンは香草とともに酢づけにしてガラス瓶に密閉して売っている。

ウナギは燻製にするか、生のままぶつ切にしてアールズッペというスープにする。ある時、ライン河の生きたウナギが市場でうごめいていた。購入し、下手ながらも三枚におろして蒸し上げ、醤油、砂糖、日本酒で作ったタレをかけオーブンで焼き上げる。香ばしい匂いが家中に漂う。

大きな期待で食べたら不味い!ライン河のウナギは小骨が硬く、蛇を想像させるような野生の嫌な匂いがして食べられたものでない。用意した高級なモーゼルワインも台無し。土浦の天然仕立てウナギを食べるたびに、ラインウナギのまずさを思い出して苦笑を禁じえない。

ドイツの魚文化で特筆すべき一品がある。生のニシンを琵琶湖のフナずしのように発酵させたものである。マテイエステー・ヘリングという。イカの塩辛とくさやの干物をミキサーにかけたような味である。はじめは臭くて食べられない。しかし、たいていのレストランのメニューにあり、腐ったような感じのグチャグチャに身が崩れた一匹が大きな皿に出てくる。結構高価である。はじめは辟易(へきえき)したが、二、三回食べて病みつきになってしまった。

しかし、マテエステー・ヘリングにも上出来や失敗作もある。上出来なものは臭いが高貴な味がする。出来損ないは腐ったような味がするだけである。日本では一度も見たことがない。どこの国にも、どこの地方にも独特な魚の食文化があり、われわれの人生を味わい深いものにしている。これもクオリティー・オブ・ライフを決定する重要な文化である