親父の23回忌で檀家寺の東北寺に子供たちが集まった。
何時も、幕末を走る著名人を狙い定め、幕末を追っかける自称「ハカマラー?」だが、今日ばかりは神妙に身内のお寺で手を合わせた。
子供たちと言っても、ン十年前の子供たちであって、腰は既に鋭角に曲がり、どうあがいても老いの姿を隠せない世代になってしまった。
かっては一族が千駄ヶ谷、杉並で一緒に暮らしたが、それぞれの道に住まいも都心を離れてしまったが、親父との絆か一緒に寄せ合うのはこんな法事位しかなくなってしまった。
本堂で朗々たる住職のお経に響きわたり、厳粛な法事が行われる。
この法事に実家で普段、全く縁の遠い、渋谷のCERULEAN TOWER 東急ホテルの40階COU CAGNOに場所を用意してもらった。
音もなく、するすると一気に40階へ、ガラス越しに見える全くの世界に目を見晴らせる。都心の高層ビルを遥かに越える場所から俯瞰するが、その場所が何処なのかガイドがなければ、中々分かりにくい。
係員に部屋を案内してもらい、席に付く。
選りすぐったスパーシエフの手の込んだフランス料理を堪能できるようである。
普段余り、お目にかかれないフランス料理にどんな物が出てくるのか、期待をしてしまう。
向かいあった形のテーブルを囲み、一族は着座するが、中々一同が揃うこともなくお互いに離れた場所での生活はどうしても他人様のように、なってしまい、まるでお見合いの席のようにそれぞれ固まってしまう。
ビール、ワインとも合わせ料理が運ばれる。
その一つが「カッペリーニとルッコラを添えたカナダ産乳飲み仔豚のキャメラリゼ 」随分ややこしい名前であるが、当日のメイン料理の一つである。
鮮やかな飾りつけは日本食のお家芸と思ったら、それは浅はかな先入観であってご覧のように、美的感覚は優れたもので、中々フォークを通すのに躊躇してしまうような芸術作品である。
柔らかに熟成された仔豚と落とされたソースが見事に溶け合い、口当たりの軽い歯ごたえに堪能する。
こうした料理が食の食べ具合の進行を図って、一つ一つ時間かけて運ばれてくる。
時間かけて、味わいながらゆっくり食べる。その間アルコールの酔もあって固まった雰囲気が徐々に氷解し、色々話が弾んでくる。
時間に追われ、ガツガツとお腹におさめる習慣から、じっくり食を確かめる世界に今日は心酔してしまった。
ナイフ、フォークの世界に無縁な明治生まれの江戸っ子かたぎの親父に、恐らく「こんなものは食えねえ」なんて今頃、言ってるかも知れない。
そんな親父を思いながら異国の食文化をしっかり味わった。
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