575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

敗戦と希望 ④            塩田丸男

2009年03月15日 | Weblog
私には秋元氏や安住氏のような秀句は残念ながらないが、一句披露させていただく。
   敗兵となりたる汗を掌で拭ふ      

 昭和二十年の八月は記録的な猛暑であった。ソ連軍の追撃をかわして内蒙古から山の尾根伝いに北京まで逃げる道のりの長かったこと!!!!!
 ハンカチもタオルもない。あふれるように噴き出す汗を何百回掌で拭ったことか。ああ、あの汗!! 敗兵の汗!!
という気持ちを素直に述べただけの句ではあるが、私には忘れられない一句なのである。

☆小学館「週刊日本の歳時記」より

★短歌ならまだしも、十七文字の俳句で戦争体験を表現するのは至難の業である
 しかし、この三句を読んでその可能性を知った次第である。(まもる)
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敗戦と希望 ③        塩田丸男  

2009年03月15日 | Weblog
てんと虫一兵われの死なざりし    安住 敦

 安住も秋元同様、新興俳句運動に参加した人だが、昭和二十年に応召し、敗戦時には対戦車爆撃要員として千葉県上総湊にいた。本土決戦に際しての水際作戦の訓練を受けていた。「一兵われは死なざりし」には安住の万感が込められている。
 「所詮、助からないと思っていた命が、これで助かったと思ったとたん涙がふり落ちた。一匹の天道虫がとんできて、私のかかえもった銃身にとまった。」(随筆歳時記)
安住の言葉に、行くたびか死線をかいくぐってきた私としては強い共感を持たずにはいられない。

☆小学館週刊日本の歳時記38号より

☆先回の秋元氏の句が精神的に暗黒から解放された心情だとすれば、安住氏の句は
生への復活といった心情でより原始的な喜びに満ちているような気がします。
 その時飛び来ったてんと虫への思いは私には理解できないほど深いものがあるようですね。(まもる)
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