蟷螂は、冬になり、あたりが枯れゆくに従って
保護色の枯葉色に変わっていきます。
しだいに生気もなくなり、やがて死に。
この様子を「蟷螂枯る」と。
「白き壁 歩み止めたる 枯蟷螂」
この中七の主語はだれでしょう?
白い壁に枯れ草色の蟷螂。
作者は枯蟷螂を見て歩み止めただけです。
これだけでは作者の気持ちは伝わりません。
次に上五のみ変えてみます。
「玄関に 歩み止めたる 枯蟷螂」
玄関に、枯蟷螂です。誰もが踏みつけることなく歩みを止めるでしょう。
すると、句に枯蟷螂を踏まないとする憐憫の念が見えてきます。
殿様の読みです。
私は、歩みを止めたのは蟷螂、と読みました。
作者は蟷螂の様子を写生しただけで読みは読者にゆだねています。
どちらの読みが良いかは人それぞれ。
枯蟷螂をみて感ずるもの。それはすでに季語に含まれているのです。
季語を生かした読みが良い読みといえるでしょう。遅足