575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

「冬ざれの 空なき空と 智恵子云ふ」<殿> 智恵子抄-句1

2019年12月04日 | Weblog


智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山あたたらやまの山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。

<智恵子抄より引用>
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「姿なき 声なき千鳥 智恵子追ふ」」<殿> 智恵子抄-句2

2019年12月04日 | Weblog


千鳥が智恵子に寄つて来る
口の中でいつでも何か言つてる智恵子が両手をあげてよびかへす
ちい ちい ちい――
両手の貝を千鳥がねだる
智恵子はそれをぱらぱら投げる
群れ立つ千鳥が智恵子をよぶ
ちい ちい ちい ちい ちい――
人間商売さらりとやめて
もう天然の向うへ行つてしまつた智恵子の
うしろ姿がぽつんと見える
二丁も離れた防風林の夕日の中で
松の花粉をあびながら私はいつまでも立ち尽す

<智恵子抄より引用>
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「切符なき 凍てし鉄路に 智恵子去ぬ」<殿> 智恵子抄-句3

2019年12月04日 | Weblog


智恵子は現身<うつしみ>のわたしを見ず
わたしのうしろのわたしに焦がれる

智恵子はくるしみの重さを今はすてて、
限りない荒漠の美意識圏にさまよい出た

わたしをよぶ声をしきりにきくが、
智恵子はもう人間界の切符を持たない

<智恵子抄より引用>

智恵子とは詩人 高村光太郎の妻
サイトは下記
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%9D%91%E6%99%BA%E6%81%B5%E5%AD%90
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