明治時代、若狭小浜出身の薄幸の歌人 山川登美子が 「 若狭八景 」
と題して詠んだ短歌の中に 「 青しま漁火( いさりび )」があります 。
漁火の三つ四つ五つ ほの見えて 青しま守の夢静かなり
小浜湾の沖に浮かぶ蒼島はナタオレノキなど暖かい地方にしか生育し
ない植物が自生していて、昭和26年 暖地性植物群落として国の天然
記念物に指定されています 。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/72/03141a409a512109a177323e69a8190b.jpg)
向かって右側が蒼島 ( 福井県小浜市加斗 ) 昨年 夏 、孫娘が撮ってくれました 。
今は無人島ですが、蒼島神社が鎮座しており、毎年夏のお祭りには
近くの加斗( かと ) の浜から神主と氏子を乗せた舟が出ています 。
私の高校時代の友人が書いた「 若狭余録 」によりますと「 若狭八景 」
は、すでに江戸時代に様々な文人が取り上げています 。
八景の選び方もそれぞれ多少は異なりますが、その中には「 青しま漁火 」
「久須夜夜雨 」を選んでいる人もいます 。
「 越前若狭地誌叢書 」にある江戸初期の「 若狭八景」の中の「青しま
漁火 」を紹介した箇所です 。
「 蒼島は海に浮かぶ蓬莱の島かと思われるくらいで、海には海士の漁火
多く、波をいろどる 。ときにはそれが星か川辺の蛍のようにも見え、鵜舟
のかがり火のようにも見える 。
その水面に写る島影は涼しげというか風情があるといおうか、
なんとも言いようのない情景である 。( 古文を意訳 。「 若狭余録 」より )
昨年の夏、85歳になる私はこれで車を運転するのも最後かなぁと思い
ながら、久しぶりに故郷へ 。
小浜湾を見下ろせる海岸沿いのホテルから「 青しま漁火 」の情景を
待ちました 。
やがて、日本海に太陽が沈み、久須夜岳と海の輪郭がわからなるほど
暗くなった頃、沖合はるか 正に星が燦めくように漁火があちこちに
ほの見えて夢心地 。
幼い頃の思い出が走馬灯のように浮かんできました 。