575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

「 詩歌に見る望郷、若狭 」⑴ 魦 イサザ   竹中敬一

2020年05月14日 | Weblog


北陸特有の暗い空、雨や雪が多く、町はいつも眠ったようで

この閉塞感から早く抜け出したい 。若い頃、そんな思いで

故郷を飛び出してから幾星霜、今はその故郷が懐かしく

思われます 。

私が生まれたところは福井県小浜市 。旧 遠敷 (おにゅう)郡

内外海村( うちとみ むら )。陸の孤島のようなところでした 。


私の母校、福井県立若狭高校で長年、国語の先生をしていた

同級生の友人 ( 今は故人 )が書いた 「 若狭余録 」の中に若狭

を詠んだ俳句や和歌がいつぱい載っていたのを思い出しました 。

この書物を参考にさせてもらいました 。


 水増して いさざ とれぬ日 続きけり 円嶺


阿万円嶺 ( あまん えんれい )は本名 正義 。宮崎県出身で、

大正13年 ( 1924 )から昭和21年 ( 1946 )まで旧制 小浜中学

の国語の先生をしていました 。

私も中学の時、阿万先生から習いました 。国語の成績が良くない

私に授業が終わった後、宮崎弁で “ タケーナカ君 ちょっと “

と呼びとめられるのがとても恥ずかしかったのを覚えています 。

歌人でもあった父と親しく、お互い文学書を貸し借りしていました。

この句は昭和9 年、高浜虚子が 「 俳句歳時記 」を出版した時、

春の季語「 いさざ 」に採用されたことで地元では知られています 。

イサザは別名シロウオ 。毎年、春先 雪解けの頃、市内を流れる

南川を遡上してくる小さな透きとおった魚を網で獲っている風景

を若い頃、よく見かけたものです 。

沸騰させた鍋に豆腐を入れ、この豆腐に生きたままのイサザを

さっとくぐらせ、ポン酢で食べます。この 「イサザのびっくり鍋 」

は「御食国 」( みけつくに )小浜の春の珍味 。

私は食したことはありませんが… 。

イサザ漁は私たち地元の者には見慣れた風景ですが、他郷から

赴任してきた阿万先生にとっは珍しい春の風物詩として心待ちに

していたのでしょう 。

*写真「若狭水晶浜>


コメント (1)
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