575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

俳句の穴

2020年09月05日 | Weblog


河東碧梧桐<かわひがしへきごとう>は松山藩
の生まれ。日本海軍の頭脳といわれた「秋山
真之」<あきやままさゆき>とは幼馴染の友人
です。余談ですが、秋山真之も文士を目指し
ています。しかし、学費の捻出が難しく兄で
ある好古<よふる>が軍人であったことから海
軍に入ります。「我、敵艦見ゆ 本日天気晴朗
なれど 波高し」日露戦争で有名な電文は真之
により生まれています。

話を戻します。碧梧桐は、松山東高校で同級
生だった高浜虚子と正岡子規の弟子となりま
す。碧梧桐と虚子は「子規の双璧」といわれ
るほどの盟友。しかし、子規の没後、虚子は
伝統的な俳句に固守します。

碧梧桐は、伝統に捉われない「新傾向俳句」
を提唱。自由律俳句誌「層雲」の荻原井泉水
<おぎわらせいせんすい>と共に、虚子と激し
い論戦を繰り広げます。ところで、虚子は子
規の逝去を碧梧桐に真っ先に知らせています。
論敵であっても友情に変わりはなかったよう
です。

「赤い椿 白い椿と 落ちにけり」<碧梧桐>

虚子は赤い椿と白い椿が地に落ちている色を
詠んでいる静止画と解釈。碧梧桐研究で知ら
れる栗田靖は、赤い椿と白い椿の花が落ちて
ゆく動画と解釈。しかし、碧梧桐の前に椿な
どなく生命の絶頂の刹那を詠んだ心象風景か
もしれません。俳句は作者の手を離れると自
立して歩きだします。解釈の自由。深淵な俳
句の穴を覗き見る感。

写真と文<殿>
コメント
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