戦艦武蔵 (新潮文庫)吉村 昭新潮社このアイテムの詳細を見る |
【一口紹介】
◆内容(「BOOK」データベースより)◆
帝国海軍の夢と野望を賭けた不沈の巨艦「武蔵」その極秘の建造から壮絶な終焉まで、壮大なドラマの全貌を描いた記録文学の力作。
◆著者略歴 ◆
(1927-2006)昭和2年(1927年)5月1日、東京日暮里に生まれる。平成18年7月31日、膵臓癌により病没。
死を覚悟したその最期が報じられ、多くの人々の共感を呼んだ。昭和41年、『星への旅』で太宰治賞を受賞。
その後、ドキュメント作品に新境地を拓き、『戦艦武蔵』等で、菊池寛賞を受ける。
更に歴史小説にも力を注ぎ、多彩な長篇小説を次々に発表。徹底した取材と緻密な構成には定評がある。
私小説を軸に、短篇小説の秀作も多い。
主な作品は、『破獄』(読売文学賞)、『冷い夏、熱い夏』(毎日芸術賞)、『桜田門外ノ変』、『天狗争乱』(大佛次郎賞)等。エッセイ集に『わたしの普段着』がある。
【読んだ理由】
NHK[私の1冊 日本の100冊」の中で最早葉月さん推薦本。
【印象に残った一行】
端的にいえば集団自殺が第三者から見て愚行とみえるように武蔵の建造もまた愚行であるという批判眼を、常にこの作者は失ってはいない。というより、むしろ愚行に専念しうる人間の奇怪さこそが、作者の暗い好奇心の対象になっているといってもよいのである。人間は愚行を演じることにおいてのみ人間たりうる、といったらいいすぎになろう。しかし作者の人間観のうちには、愚行の現実性こそが人間の本質を開示するとでもいいたげな、ほとんどふてぶてしいほどの認識がある。巨大な歳月の流れの前には、いかなる壮大な人間の事業も、一片の水泡でしかありえないことを作者は知っている。にもかかわらず、壮大な愚行もまた、それに専念する人間にとっては、抜きさしならぬ人生の一齣を形づくってしまうことをも作者は十分い見ぬいている。(解説 磯田光一)
【コメント】
記録文学なるものを始めて読んだが、作者のゼロからの取材からの労力には頭が下がる。
武蔵の建造が壮大な愚行であったかどうかは議論の分かれるところであろう。