【まくら】
信仰して一生懸命働けば必ずいいことがあるという正直者の男の噺。
孝行、信心、勤勉、夫婦の絆など、日ごろおろそかにされがちな大切なこと思いださせてくれるのはもちろん、最後にはお赤飯までふるまわれるという、たいへんおめでたい噺。
「豆腐い」と、長くひいて、「生あげ、がんもどき」と節をつけての売り声が面白い。
【あらすじ】
甲府育ちの善吉。
早くから両親をなくし、伯父夫婦に育てられたが、今年二十になったので、江戸に出てひとかどの人間になり、育ての親に恩を返したいと、身延山に断ち物をして願を掛け、上京してきたが、生き馬の目を抜く江戸のこと。
浅草寺の境内で巾着(きんちゃく)をすられ、無一文。
腹を減らして市中をさまよったが、これではいけないと葭町(よしちょう)の
千束屋(ちづかや)という口入屋(くちいれや)を目指すうち、つい、とある豆腐屋の店先でオカラを盗みぐい。
若い衆が袋だたきにしようというのを、主人が止め、
事情をきいてみると、これこれこういう訳と涙ながらに語ったので、
気の毒に思い、ちょうど家も代々法華宗、これもお祖師さまの引き合わせだと、善吉を家に奉公させることにした。
仕事は、豆腐の行商。
給金は出ないが、商高の応じて歩合が取れるので励みになる。
こうして足掛け三年、影日向なく懸命に「豆腐ィ、胡麻入り、がんもどき」と、売って歩いた。
愛想がよく、売り声もなかなか美声だから客もつき、主人夫婦も喜んでいる。
ある日、娘のお孝も年ごろになったので、一人娘のこと、放っておくと虫がつくから、早く婿を取らさなければならないと夫婦で相談し、宗旨も合うし、真面目な働き者ということで、善吉に決めた。
幸い、お孝も善吉に気があるようす。
問題は本人だとおかみさんが言うと、気が短い主人、まだ当人に話もしていないのに、善吉が断ったと思い違いして怒り出し「なにっ、あいつが否やを言える義理か。
半死半生でオカラを盗んだのを哀れに思い、拾ってやった恩も忘れて増長しやがったな。薪ざっぽ持ってこい」と、大騒ぎ。
目を白黒させた善吉だが、自分風情がと遠慮しながらも、結局承知し、めでたく豆腐屋の養子におさまった。
それから夫婦で家業に励んだから、店は繁盛。土地を二か所も買って、居付地主。
そのうち、年寄り夫婦は隠居。
ある日、善吉が隠居所へ来て、もう江戸へ出て十年になるが、まだ甲府の在所へは一度も帰っていないので、両親の十三回忌と身延さまへのお礼を兼ね、里帰りさせてほしいと、申し出る。
お孝もついて行くというので、喜んで旅支度してやり、翌朝出発。
「ちょいと、ごらんな。縁日にも行かない豆腐屋の若夫婦が、今日はそろって、もし若だんな、どちらへお出かけで?」と聞かれて善吉が振り向き
「甲府(豆腐)ィ」
お孝が
「お参り(胡麻入り)、願ほどき(がんもどき)」
【オチ・サゲ】
地口落ち(地口とは、同音や似通った語を並べ、違う意味を表す洒落)
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『ひもじさと寒さと恋を比ぶれば、恥ずかしながらひもじさが先』
【語句豆辞典】
【口入屋】武家奉公人や岡場所における人材斡旋。慶庵(けいあん)とも言った。
【居付地主】自分の土地・家屋に住んでいる者、すなわち地主。
【身延山】寺号は久遠寺。日蓮宗の総本山。
【この噺を得意とした落語家】
・五代目 古今亭志ん生
・三代目 古今亭志ん朝
・八代目 三遊亭可楽
・六代目 三遊亭圓窓
【落語豆知識】
【楽日(らくび)】興行の最後の日。千秋楽。
信仰して一生懸命働けば必ずいいことがあるという正直者の男の噺。
孝行、信心、勤勉、夫婦の絆など、日ごろおろそかにされがちな大切なこと思いださせてくれるのはもちろん、最後にはお赤飯までふるまわれるという、たいへんおめでたい噺。
「豆腐い」と、長くひいて、「生あげ、がんもどき」と節をつけての売り声が面白い。
【あらすじ】
甲府育ちの善吉。
早くから両親をなくし、伯父夫婦に育てられたが、今年二十になったので、江戸に出てひとかどの人間になり、育ての親に恩を返したいと、身延山に断ち物をして願を掛け、上京してきたが、生き馬の目を抜く江戸のこと。
浅草寺の境内で巾着(きんちゃく)をすられ、無一文。
腹を減らして市中をさまよったが、これではいけないと葭町(よしちょう)の
千束屋(ちづかや)という口入屋(くちいれや)を目指すうち、つい、とある豆腐屋の店先でオカラを盗みぐい。
若い衆が袋だたきにしようというのを、主人が止め、
事情をきいてみると、これこれこういう訳と涙ながらに語ったので、
気の毒に思い、ちょうど家も代々法華宗、これもお祖師さまの引き合わせだと、善吉を家に奉公させることにした。
仕事は、豆腐の行商。
給金は出ないが、商高の応じて歩合が取れるので励みになる。
こうして足掛け三年、影日向なく懸命に「豆腐ィ、胡麻入り、がんもどき」と、売って歩いた。
愛想がよく、売り声もなかなか美声だから客もつき、主人夫婦も喜んでいる。
ある日、娘のお孝も年ごろになったので、一人娘のこと、放っておくと虫がつくから、早く婿を取らさなければならないと夫婦で相談し、宗旨も合うし、真面目な働き者ということで、善吉に決めた。
幸い、お孝も善吉に気があるようす。
問題は本人だとおかみさんが言うと、気が短い主人、まだ当人に話もしていないのに、善吉が断ったと思い違いして怒り出し「なにっ、あいつが否やを言える義理か。
半死半生でオカラを盗んだのを哀れに思い、拾ってやった恩も忘れて増長しやがったな。薪ざっぽ持ってこい」と、大騒ぎ。
目を白黒させた善吉だが、自分風情がと遠慮しながらも、結局承知し、めでたく豆腐屋の養子におさまった。
それから夫婦で家業に励んだから、店は繁盛。土地を二か所も買って、居付地主。
そのうち、年寄り夫婦は隠居。
ある日、善吉が隠居所へ来て、もう江戸へ出て十年になるが、まだ甲府の在所へは一度も帰っていないので、両親の十三回忌と身延さまへのお礼を兼ね、里帰りさせてほしいと、申し出る。
お孝もついて行くというので、喜んで旅支度してやり、翌朝出発。
「ちょいと、ごらんな。縁日にも行かない豆腐屋の若夫婦が、今日はそろって、もし若だんな、どちらへお出かけで?」と聞かれて善吉が振り向き
「甲府(豆腐)ィ」
お孝が
「お参り(胡麻入り)、願ほどき(がんもどき)」
【オチ・サゲ】
地口落ち(地口とは、同音や似通った語を並べ、違う意味を表す洒落)
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『ひもじさと寒さと恋を比ぶれば、恥ずかしながらひもじさが先』
【語句豆辞典】
【口入屋】武家奉公人や岡場所における人材斡旋。慶庵(けいあん)とも言った。
【居付地主】自分の土地・家屋に住んでいる者、すなわち地主。
【身延山】寺号は久遠寺。日蓮宗の総本山。
【この噺を得意とした落語家】
・五代目 古今亭志ん生
・三代目 古今亭志ん朝
・八代目 三遊亭可楽
・六代目 三遊亭圓窓
【落語豆知識】
【楽日(らくび)】興行の最後の日。千秋楽。