世の中は・・・巻五・七九三 大伴旅人
世の中は・・・巻五・七九三 大伴旅人
「世の中は 空しきものと 知る時し いよよますます かなしかりけり」
校訂原点(漢字)
「余能奈可波 牟奈之伎母乃等 志流等伎子 伊与余麻須万須 加奈之可利家理」
現代語訳と解説
「この世が空(くう)だとはじめて思い知った時こそ、いよいよ、ますます悲しかったことだ」
妻を亡くした大伴旅人。慰問に来た勅使から、都でも親しかった人が亡くなったことを知らされたのでしょう。妻を失った悲しみと、親しかった人が亡くなったと知った悲しみ。旅人はこの二つの悲しみから、世の中はむなしいものだと改めて感じたのです。
人はみな死ぬもの。輪廻転生で生まれ変われると頭では理解しています。しかし、現実に愛する者と、親しくしていた者とを失うことは悲しみではなく、むなしさなのでしょう。
死の悲しみを抱きながら、生きていかなければならないと感じる旅人。「生者のあらん限り、死者は生きん。」という言葉があります。亡くなった人を思い続ける限り、生きている人の胸の中でその人は生き続ける。しかし、その悲しみをもって生き続けなくてはならない。そこに、底知れぬむなしさを感じたのかもしれません。
世の中は・・・巻五・七九三 大伴旅人
「世の中は 空しきものと 知る時し いよよますます かなしかりけり」
校訂原点(漢字)
「余能奈可波 牟奈之伎母乃等 志流等伎子 伊与余麻須万須 加奈之可利家理」
現代語訳と解説
「この世が空(くう)だとはじめて思い知った時こそ、いよいよ、ますます悲しかったことだ」
妻を亡くした大伴旅人。慰問に来た勅使から、都でも親しかった人が亡くなったことを知らされたのでしょう。妻を失った悲しみと、親しかった人が亡くなったと知った悲しみ。旅人はこの二つの悲しみから、世の中はむなしいものだと改めて感じたのです。
人はみな死ぬもの。輪廻転生で生まれ変われると頭では理解しています。しかし、現実に愛する者と、親しくしていた者とを失うことは悲しみではなく、むなしさなのでしょう。
死の悲しみを抱きながら、生きていかなければならないと感じる旅人。「生者のあらん限り、死者は生きん。」という言葉があります。亡くなった人を思い続ける限り、生きている人の胸の中でその人は生き続ける。しかし、その悲しみをもって生き続けなくてはならない。そこに、底知れぬむなしさを感じたのかもしれません。